1 刑法47条は,併合罪のうち2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは,同条が定めるところに従って併合罪を構成する各罪全体に対する統一刑を処断刑として形成し,その範囲内で各罪全体に対する刑を決することとした規定であって,併合罪の構成単位である各罪について個別的な量刑判断を行うことは,法律上予定されていない。 2 刑訴法495条2項2号にいう「上訴審において原判決が破棄されたとき」とは,当該上訴審における破棄判決が確定した場合をいう。
1 刑法47条の法意 2 刑訴法495条2項2号にいう「上訴審において原判決が破棄されたとき」の意義
刑法21条,刑法47条,刑訴法495条2項
判旨
刑法47条の併合罪加重は、各罪全体に対する統一的な処断刑を形成する規定であり、処断刑の範囲内で刑を決定する際、個別の罪についてあらかじめ個別的な量刑判断を行って合算することや、個別の罪の法定刑による制約を課すことは法律上予定されていない。
問題の所在(論点)
併合罪につき刑法47条を適用して刑を量定する場合、処断刑の範囲内であれば、併合罪を構成する個別の罪の法定刑の長期を超えて当該罪を評価し、宣告刑を決定することができるか。
規範
刑法47条は、併合罪を構成する各罪全体に対する統一刑を処断刑として形成し、修正された法定刑ともいうべきこの処断刑の範囲内で、各罪全体に対する具体的な刑を決することとした規定である。したがって、具体的な刑を量定するにあたり、各罪についてあらかじめ個別的な量刑判断を行った上で合算することは法律上予定されておらず、併合罪を構成する個別の罪の法定刑によって量刑上の制約を課すことも相当ではない。
重要事実
被告人は、逮捕監禁致傷罪(法定刑:懲役10年以下)と窃盗罪(法定刑:懲役10年以下)の併合罪に問われた。第1審は、窃盗の犯情は比較的軽微である一方、逮捕監禁致傷の犯情が極めて悪質であり、同罪の法定刑の上限では不十分であるとして、併合罪加重(刑法47条)を適用し、懲役14年を宣告した。これに対し原審は、併合罪の量刑においても個別の罪の法定刑を超える評価をすることは許されない(逮捕監禁致傷罪分として10年、窃盗罪分として4年と評価すべき)として、第1審判決を破棄したため、検察官が上告した。
事件番号: 平成16(あ)2077 / 裁判年月日: 平成17年4月14日 / 結論: 棄却
恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。
あてはめ
刑法47条に基づき、逮捕監禁致傷罪と窃盗罪について併合罪加重を行うと、処断刑の範囲は懲役3月以上15年以下となる。同条は、併科による過酷な結果を回避しつつ、各罪を一体として評価する加重単一刑主義を採用したものであり、ひとたび処断刑が形成されれば、その枠内での量刑判断に特段の法的制約はない。原審のように「個別の罪の法定刑を超えて評価できない」とする解釈は、法律が予定していない不文の制約を課すものであり、同条の解釈適用を誤っている。本件では、全体的な犯情を考慮し、処断刑(15年以下)の範囲内で懲役14年を選択した第1審の判断に違法はない。
結論
併合罪の量刑においては、個別の罪の法定刑に拘束されず、刑法47条により形成された処断刑の範囲内で具体的な刑を決定できる。したがって、第1審の量刑は適法であり、原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
併合罪における「加重単一刑主義」の帰結を明確にした判例である。答案上は、併合罪の処断刑の算定プロセスを論じる際、形成された処断刑が「修正された法定刑」として機能し、個別の罪の枠に縛られない一体的な量刑が可能である根拠として引用する。
事件番号: 平成17(あ)2113 / 裁判年月日: 平成18年8月31日 / 結論: 棄却
併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,刑法46条2項により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数を非勾留事実に係る罪に対する無期懲役刑及び罰金刑にそれぞれ算入することができる。
事件番号: 平成18(あ)2455 / 裁判年月日: 平成19年3月22日 / 結論: 棄却
併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。