併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。
併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合にその罪について死刑又は無期刑を選択することの可否
刑法45条,刑法46条,刑訴法333条1項
判旨
併合罪関係にある数罪のうち1個の罪について無期懲役刑等を選択する際、他の罪の情状を考慮することは許され、当該罪のみでその刑が相当とされる場合に限定されない。
問題の所在(論点)
併合罪関係にある複数の罪のうち、1個の罪について死刑または無期刑を選択する際、他の犯罪事実を考慮して刑種を決定できるか。刑法46条の解釈が問題となる。
規範
刑法46条の趣旨は、死刑又は無期刑を科す際に他の刑を吸収させることで、その罪をも処罰する点にある。したがって、併合罪のうち1個の罪について刑種を選択する際、他の罪を処罰する趣旨でこれを考慮でき、当該1個の罪のみで死刑又は無期刑が相当とされる場合に限られない。刑種の選択は量刑の一部であり、他の犯罪事実を情状として考慮することは当然に許容される。
重要事実
被告人が併合罪関係にある複数の罪を犯した事案において、原判決が1個の罪について無期懲役刑を選択した。これに対し弁護人は、併合罪のうち1個の罪について無期懲役刑を選択できるのは、刑法46条2項の趣旨に照らし、その罪のみで無期懲役刑に処するのが相当な場合に限られると主張して上告した。
あてはめ
刑法46条は、重刑に他の刑を吸収させ、これによって併合罪の全体を処罰する趣旨である。本件において、1個の罪について無期懲役刑を選択するにあたり、刑が科されないこととなる他の罪の内容を、全体として処罰する趣旨で考慮することは、同条の趣旨に合致する。また、刑種の選択は広範な裁量を有する量刑判断の一環であるから、他の犯罪事実の存在をその事情の一つとして考慮することは適法である。
結論
併合罪のうち1個の罪について刑種を選択する際、他の罪の情状を考慮することは可能であり、当該罪のみでその刑種が相当である必要はない。
実務上の射程
併合罪の刑種選択に関するリーディングケースである。答案上は、複数の余罪や併合罪がある事案で、特定の1罪について重い刑種(死刑・無期)を選択する際の正当化根拠として活用する。刑法46条を「吸収による処罰」と解釈する点に論理の核心がある。
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
事件番号: 平成4(あ)168 / 裁判年月日: 平成9年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、および被告人の前科等を総合的に考慮し、酌むべき事情を十分に考慮しても罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、常習累犯窃盗罪により懲役3年6月に処せられ、仮出獄中の身であった…
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。
事件番号: 平成18(あ)746 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。 第1 事案の概要:中…