論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであるから、原審はまづ強盜罪について同法第四三條第六八條第三號により、未遂減輕をしたのであつて、その結果強盜未遂罪の刑は二年六月以上七年六月以下の懲役となつたのである。そこで、強盜未遂罪の右の刑を窃盜罪の十年以下の懲役と比較すれば窃盜罪の刑の方が重いことは、同法第一〇條第二項によつて明かであるから、原審は同法第四七條によつて重い窃盜罪の刑について併合罪の加重をしたのであつて、原審の適條は正しく、原判決には所論のような違法はない、
窃盜と強盜未遂の併合罪における刑の輕重の比較
刑法43條,刑法68條3號,刑法72條,刑法47條,刑法10條2項
判旨
複数の罪が併合罪の関係にある場合、法律上の減軽をした後の刑を比較して重い方の罪の刑をもって加重の基礎とすべきであり、また被告人の公判廷での自白は、補強証拠がなくともそれのみで有罪の証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
1. 併合罪の刑の加重において、未遂減軽等の法律上の減軽がなされる場合の刑の軽重の決定基準は何か。2. 公判廷での自白に補強証拠は必要か。3. 「会社」への侵入が刑法130条の「人の看守する建造物」への侵入にあたるか。
規範
1. 刑の加重減軽が重なる場合、刑法72条により併合罪の加重(47条)に先立って法律上の減軽をすべきであり、その減軽後の刑を10条2項により比較して重い方の刑を基礎に加重する。2. 公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項の「自白」には含まれず、補強証拠なくして犯罪事実を認定する証拠とすることができる。3. 刑法130条の建造物侵入罪の客体は、管理人が現に看守しているものであれば足りる。
重要事実
被告人は窃盗罪(刑法235条)と強盗未遂罪(236条、243条)の併合罪に問われた。原審は強盗未遂罪について未遂減軽(43条、68条3号)を行い、その結果として上限が10年である窃盗罪の方が重いと判断し、窃盗罪の刑を基礎に併合罪の加重を行った。また、原審は事実認定において、被告人の公判廷における自白のみを証拠として用いた。さらに、被告人らが共謀して「会社」に侵入した事実について、住居侵入罪を適用した。
あてはめ
1. 強盗罪は未遂減軽により、その法定刑が「2年6月以上7年6月以下の懲役」となる(当時の法定刑基準)。これを窃盗罪(10年以下の懲役)と比較すると、刑法10条2項の原則により、上限の長い窃盗罪の方が重いといえる。したがって、重い窃盗罪の刑について併合罪の加重を行うことは正当である。2. 自白については、憲法が要求する補強証拠の原則は裁判外または公判準備等の自白を指すものであり、裁判所の面前でなされた公判廷の自白は、特段の補強を要さず直接の証拠となり得る。3. 会社所有の金品奪取を目的に社員が勤務する場所に侵入した事実は、客観的にみて「人の看守する建造物」への侵入に該当すると解される。
結論
原判決に違法はなく、上告を棄却する。公判廷の自白のみで犯罪事実を認定でき、また刑の加重にあたって減軽後の刑を比較した判断は正当である。
実務上の射程
併合罪の科刑上の計算手順(減軽→比較→加重)を確認する実務的指針となる。また、公判廷自白の証拠能力については、当時の判例法理として補強不要説を採るが、現行法下(刑事訴訟法319条2項)では公判廷の自白であっても補強証拠が必要とされている点に注意が必要である(本判決の証拠法部分は現行実務上の射程は限定的)。
事件番号: 昭和24(れ)1354 / 裁判年月日: 昭和24年7月19日 / 結論: 棄却
いわゆる自白の補強證據というものは。被告人の自白した犯罪が架空のものではなく、現實に行われたものであることを證するものであれば足りるのであつて、その犯罪が被告人によつて行われたという犯罪と被告人との結びつきまでをも證するものであることを要するものではない。
事件番号: 昭和24(れ)552 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
しかし、有罪判決に示すべき強盜罪の一構成要件たる「他人の財物」であることを判示するには、該構成要件に該當するか、否かを判定するに足る程度の具體的事實を掲げさえすれば差支えないものであつて所論のように、目的物の確定數を表示することを要するものではない。そして原判決は、A所有の中古三つ揃背廣服一着外衣類七點位と判示していて…
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…