併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,刑法46条2項により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数を非勾留事実に係る罪に対する無期懲役刑及び罰金刑にそれぞれ算入することができる。
刑法46条2項により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数の算入
刑法21条,刑法45条前段,刑法46条2項,刑法48条1項
判旨
未決勾留日数の本刑算入(刑法21条)につき、裁判所は原則として勾留事実に係る罪の刑に算入すべきであるが、併合罪関係にある数罪を併合審理する場合、数罪を包括的に評価して1個の主文により言い渡される刑であれば、非勾留事実に係る罰金刑への算入も許容される。
問題の所在(論点)
併合罪として併合審理された数罪に対し懲役刑と罰金刑を併科する場合、勾留されていない事実に係る罰金刑に対して、他の罪の勾留事実に係る未決勾留日数を算入することが刑法21条に照らして許されるか。
規範
刑法21条の「本刑」への算入は、勾留事実に係る罪に対する刑に算入するのが原則であるが、特段の合理的理由があるときは、非勾留事実に係る罪に対する刑への算入も許される。また、併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合、それらを包括的に評価して1個の主文による刑を言い渡すべきものであるから、併合罪の一部について生じた未決勾留日数を、他の罪に係る刑(罰金刑を含む)に算入することも同条の原則に従ったものとして許容される。
重要事実
被告人は、わいせつ略取、強盗強姦罪(勾留事実)のほか、合計7回の追起訴(非勾留事実)を受け、併合審理された。第1審判決は、勾留された罪に対し有期懲役刑を、非勾留の別の罪に対し無期懲役刑を選択した上、刑法46条2項に基づき無期懲役刑に非勾留事実の罪に係る罰金刑を併科した。その際、未決勾留日数のうち、400日を無期懲役刑に、30日を罰金刑(1日5000円換算)に算入した。弁護人は、非勾留事実である罰金刑への算入は刑法21条に反すると主張して上告した。
事件番号: 平成18(あ)2455 / 裁判年月日: 平成19年3月22日 / 結論: 棄却
併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。
あてはめ
刑法は、併合罪関係にある数罪を併合審理する場合、数罪を包括的に評価して刑を言い渡す構造をとっている。本件においても、勾留された罪と非勾留の罪は併合罪関係にあり、1個の主文によって無期懲役及び罰金刑が言い渡されている。したがって、勾留事実に係る未決勾留日数を、包括的に評価された刑の一部である罰金刑に算入することは、実質的にみて「勾留事実に係る罪に対する刑」への算入の原則に合致しており、違法ではない。
結論
併合罪として併合審理される数罪のうち、非勾留事実に係る罪の罰金刑に対し未決勾留日数を算入することは許される。
実務上の射程
併合罪における未決勾留日数の算入対象(本刑)の柔軟な解釈を認めた。答案上は、数罪が併合罪として審理されている限り、特定の罪に紐づいた勾留であっても、主文で言い渡される刑の一部(罰金刑等)への算入を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和56(あ)1748 / 裁判年月日: 昭和57年5月7日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行を受けている期間と未決勾留の期間が重なる場合、その競合期間を刑法21条に基づき本刑に算入することは、二重の刑執行を認めることになり許されない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和55年6月に本件窃盗の事実で勾留された。一方で、被告人は別罪について執行猶予が取り消されたことにより、同年12…
事件番号: 昭和45(あ)1877 / 裁判年月日: 昭和46年4月22日 / 結論: その他
別件の刑に決定通算されるべき勾留と重複する未決勾留の日数を刑法二一条により本刑に算入することは許されない。
事件番号: 昭和55(あ)409 / 裁判年月日: 昭和55年7月18日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑等の執行と期間が重複する未決勾留の日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許されるのは、別罪の刑の執行が終了した日の翌日から判決言渡し前日までの期間に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、本件被告事件について勾留中であったが、その期間内に、別罪(業務上過…