判旨
罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と、同一事件に関する未決勾留が期間において競合する場合、当該未決勾留日数を刑法21条によって本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行を受けている期間と、当該事件の未決勾留期間が競合する場合、刑法21条に基づき、その未決勾留日数を本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入(裁量的算入)は、本来刑の執行を受けていない状態にある未決の拘禁期間を刑期に充当する制度である。したがって、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行が既に行われている期間は、既に他の刑(換刑処分)の執行を受けている状態にあるため、これと競合する未決勾留日数をさらに本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は第一審で懲役7年の宣告を受け、控訴した。控訴申立の日から控訴審判決前日までの間、被告人は引き続き勾留されていたが、この期間中、別罪(業務上過失傷害等)による罰金3万5000円の換刑処分として、140日間の労役場留置の執行も受けていた。原審(控訴審)は、この労役場留置と競合する控訴審での未決勾留日数のうち30日を本刑に算入すると言い渡したため、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
被告人の原審における未決勾留は、その全期間を通じて別罪の罰金刑に基づく労役場留置の執行と競合して行われた。労役場留置は自由刑に準ずる刑の執行としての性質を有しており、この期間は既に刑の執行を受けている実態がある。このような「刑の執行と競合する未決勾留」を本刑に算入することは、二重の刑期充当を認めることになり、未決勾留の算入に関する法理に反する。したがって、本件において原審が算入を認めた30日は、労役場留置の期間と重複しており、刑法21条を適用する余地はない。
結論
労役場留置の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。原判決のうち算入を認めた部分は破棄を免れない。
実務上の射程
未決勾留日数の算入(刑法21条)の限界を示す。実務上、被告人が余罪で受刑中であったり労役場留置中であったりする場合、その期間の勾留は「身柄付」の状態に過ぎず、裁量的算入の対象から除外されるべきことを裏付ける。答案上は、未決勾留の算入が争点となる具体的計算問題等において、他の刑の執行との重複を否定する根拠として活用する。
事件番号: 昭和43(あ)2326 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑等の執行と未決勾留が競合する場合、その競合期間中の未決勾留日数を刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。したがって、本刑に算入できる未決勾留日数は、刑の執行が開始される前日までの期間に限られる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪(本件)により勾留中であったが、別件の執行猶予が取り消さ…