懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入した原判決が破棄された事例
刑法21条
判旨
懲役刑等の執行と期間が重複する未決勾留の日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許されるのは、別罪の刑の執行が終了した日の翌日から判決言渡し前日までの期間に限られる。
問題の所在(論点)
未決勾留期間が別罪の懲役刑の執行期間と重複している場合、当該重複期間を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入において、他の懲役刑の執行と競合する期間については、これを受刑期間としての性質を有するものと解し、重ねて本刑に算入することは許されない。算入の対象となるのは、刑の執行を受けていない期間としての未決勾留日数に限定される。
重要事実
被告人は、本件被告事件について勾留中であったが、その期間内に、別罪(業務上過失傷害等)による懲役刑の仮出獄を取り消され、昭和54年2月28日から同年11月12日まで当該残刑の執行を受けていた。原審は、この受刑期間を含む「当審における未決勾留日数中150日」を本件の刑に算入する判決を言い渡したため、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
被告人は昭和54年2月28日から同年11月12日まで、別罪の残刑につき受刑中であった。この期間は実質的に刑の執行を受けているものであり、未決勾留日数の算入が許されるのは、当該残刑の執行が終了した日の翌日(昭和54年11月13日)から、原判決言渡の前日(昭和55年1月20日)までの69日間に限られる。したがって、原審がこの限度を超えて150日を算入した判断は、刑法21条の解釈を誤り、判例に相反するものといえる。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。原判決中の算入部分を破棄し、適法な範囲である69日のみを本刑に算入する。
実務上の射程
刑法21条の「未決勾留日数」の算入範囲に関する準則を示す。実務上、被告人が余罪で受刑中である場合や、勾留中に別罪の刑が確定し執行が開始された場合には、その受刑期間を算入対象から除外する必要がある。答案上は、二重の利得(受刑と算入の重複)を認めない趣旨として論証に用いる。
事件番号: 昭和34(あ)2418 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が勾留中に別件の確定刑の執行を受けた場合、勾留状の執行と懲役刑の執行が重複している期間の未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の解釈適用を誤ったものであり許されない。 第1 事案の概要:被告人は、本件の起訴前から第一審・第二審を通じて勾留されていたが、これより先に別件の強盗罪等により…