監禁,強姦事件につき,監禁罪の成立を認めた点で第一,二審判決には事実誤認があるとして破棄自判した事例
刑法177条前段,刑法220条,刑訴法411条3号
判旨
被告人が被害者の顔面にスプレーを噴射し、全治約1週間を要する眼球結膜充血等の傷害を負わせた事案において、原判決の認定には論理則・経験則に反する重大な誤認があるとし、強制わいせつ致死傷罪等の成立を否定し、傷害罪等の範囲で有罪とした。
問題の所在(論点)
被害者供述の変遷や客観的事実との矛盾がある中で、第一審が認定した「強制わいせつ目的」および「凶器を用いた脅迫・監禁」という事実認定が、論理則・経験則に照らして是認できるか。
規範
事実認定において、供述の信用性を判断する際には、供述内容の変遷、客観的状況との整合性、および供述に至る経緯を総合的に検討しなければならない。特に、自白や被害供述が不自然に変遷している場合、その合理的な理由がない限り、直ちに犯罪事実を認定する根拠とすることは許されない。
重要事実
被告人がテレクラで知り合った女性(被害者)と待ち合わせ、車に乗せた後、被害者の顔面にスプレーを噴射して傷害を負わせた。第一審は、被告人が強制わいせつの目的でカミソリ様の刃物を示して脅迫し、車内に監禁して傷害を負わせたと認定。しかし、被告人の供述によれば、被害者との合流経緯には第三者の介在があり、スプレー噴射の動機も被害者の言動に対する憤慨によるものであった。被害者の供述は、車への乗車経緯や凶器の有無について変遷が激しく、客観的な通話記録とも矛盾していた。
あてはめ
被害者供述は、車に乗るまでの経緯(無理やり乗せられたとする点)がテレクラの利用状況や通話履歴と整合せず、不自然である。また、凶器(カミソリ様のもの)で脅されたとする供述も、被告人が一貫して否定している上、被害者のその後の行動(合流後に自ら電話をかけている点等)と照らし合わせると不自然に過ぎる。一方で、被告人の「冷やかしに対する報復としてスプレーをかけた」という供述は、通話記録等の客観的事実と合致しており、信用性が高い。したがって、わいせつ目的や監禁の事実は認められない。
事件番号: 昭和42(あ)1482 / 裁判年月日: 昭和42年12月21日 / 結論: 棄却
暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
結論
被告人につき、強制わいせつ致傷罪および逮捕監禁罪の成立を認め、懲役6年とした第一審判決を破棄。スプレー噴射による傷害罪および暴行罪等の成立に留め、懲役2年を言い渡した。
実務上の射程
供述証拠の信用性判断が分かれた際の規範的な当てはめ例として重要である。特に「客観的な通話記録(客観的証拠)」との矛盾が、供述の信用性を根底から覆す決定打となることを示しており、刑事実務における事実認定の在り方を規律する。
事件番号: 平成22(あ)2011 / 裁判年月日: 平成24年7月24日 / 結論: 棄却
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者が,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認められる場合,同障害の惹起は刑法にいう傷害に当たり,監禁致傷罪が成立する。
事件番号: 平成20(あ)333 / 裁判年月日: 平成22年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯人の識別に関する目撃供述の信用性判断、および身体的疾患が犯行に与える影響についての事実誤認の有無が争われた事例。 第1 事案の概要:被告人は駅ホームで女性のスカート内に携帯電話を差し入れたとして都迷惑防止条例違反で起訴された。被害者は、背後から犯人に袖を掴まれ、その後も断続的に犯人の姿を視認して…
事件番号: 昭和46(あ)1083 / 裁判年月日: 昭和46年9月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が被告人の控訴趣意の一部に判断を示さなかったとしても、第一審において弁護権が実質的に保障されており、被告人の権利が害されていない場合には、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:被告人が強姦および恐喝未遂で起訴された事案。第一審の第一回公判において、当…
事件番号: 平成16(あ)2077 / 裁判年月日: 平成17年4月14日 / 結論: 棄却
恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。