満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被告人が犯行を行ったとした控訴審の判断が是認された事例
刑訴法411条
判旨
犯人の識別に関する目撃供述の信用性判断、および身体的疾患が犯行に与える影響についての事実誤認の有無が争われた事例。
問題の所在(論点)
被害者による犯人識別の供述に、合理的疑いを超える信用性が認められるか。また、被告人の身体的症状から、犯行態様が可能であったといえるか。
規範
目撃供述の信用性を判断するにあたっては、目撃時の状況(距離、時間、照明等)、目撃者の属性、対象者の特徴、その後の識別手続の適正さを総合考慮すべきである。また、被告人の身体的疾患が犯行の不能を示唆する場合、医学的診断や日常の動作状況に基づき、犯行当時の具体的態様が可能であったかを客観的に評価しなければならない。
重要事実
被告人は駅ホームで女性のスカート内に携帯電話を差し入れたとして都迷惑防止条例違反で起訴された。被害者は、背後から犯人に袖を掴まれ、その後も断続的に犯人の姿を視認しており、駅員室まで追及した人物が犯人であると供述した。被告人側は、①被害者が他者と取り違えた可能性、②被告人の右肩腱板断裂により「腕を上げる動作」は不可能であったことを主張した。
あてはめ
①識別について、被害者は至近距離(約20cm)で犯人を視認し、駅員室に到着するまで断続的にその外見を捕捉し続けており、別人と取り違える余地は乏しい。被害者の供述は具体的かつ合理的であり、信用性が高い。②身体状況について、医師の診断書では右肩可動域に制限があり、腕を上げると痛みが生じるとされているが、完全に不動ではない。日常的にカバンから物を取り出す等の動作は可能であり、犯行時の「右手を差し入れる」程度の動作が不可能であったとは認められない。
事件番号: 平成19(あ)1785 / 裁判年月日: 平成21年4月14日 / 結論: 破棄自判
1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行うべきである。 2 被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を…
結論
被害者供述の信用性を肯定し、身体的疾患により犯行不可能とする被告人の主張を退けた一審・二審の判断に、不合理な点はなく、事実誤認は認められない。上告棄却。
実務上の射程
犯人識別供述の信用性判断において、目撃の継続性と距離が重視されること、および医学的制約が主張される場合でも日常の具体的動作能力に基づき個別具体的に判断されることを示した。
事件番号: 昭和63(あ)130 / 裁判年月日: 平成元年10月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】目撃証言や犯人識別供述の信用性は、対象者の属性、面通し状況、記憶喚起の過程等を慎重に吟味すべきであり、自白も客観的証拠との矛盾や秘密の暴露の有無を厳格に判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人が、マンションの踊り場等で9歳の女児Aに対しわいせつ行為をしたとして起訴された事案。Aは当初犯人を知ら…
事件番号: 平成21(あ)1125 / 裁判年月日: 平成23年9月14日 / 結論: 棄却
1 被害者の証人尋問において,検察官が,証人から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するため,証拠として採用されていない捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを求めた場合において,写真の内容が既にされた供述と同趣旨のものであるときは,刑訴規則199条の12に基づきこれを許可…