1 被害者の証人尋問において,検察官が,証人から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するため,証拠として採用されていない捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを求めた場合において,写真の内容が既にされた供述と同趣旨のものであるときは,刑訴規則199条の12に基づきこれを許可した裁判所の措置に違法はない。 2 証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付する措置について,当事者の同意は必要ではない。 3 証人に示された被害再現写真が独立した証拠として採用されていなかったとしても,証人がその写真の内容を実質的に引用しながら証言した場合には,引用された限度において写真の内容は証言の一部となり,そのような証言全体を事実認定の用に供することができる。
1 被害者の証人尋問において,捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを許可した裁判所の措置に違法がないとされた事例 2 証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付する措置について,当事者の同意は必要か 3 独立した証拠として採用されていない被害再現写真を示して得られた証言を事実認定の用に供することができるか
(1〜3につき)刑事訴訟規則199条の12,(1につき)刑訴法304条,(2につき)刑事訴訟規則49条,(3につき)刑訴法317条
判旨
証人尋問において、供述を視覚的に明確化する目的で、証拠能力が認められていない被害再現写真を示すことは、証人に不当な影響を与えない限り適法である。また、当該写真を尋問調書に添付し、証言の一部として事実認定の用に供することも、伝聞法則に反しない。
問題の所在(論点)
証拠能力が認められていない「被害再現写真」を尋問の際に提示し、これを尋問調書に添付した上で、当該内容を含む証言を事実認定の基礎とすることが伝聞法則(刑訴法320条1項)に抵触し、違法となるか。
規範
1. 刑事訴訟規則199条の12に基づき、供述内容を視覚的に明確化するために、証拠採用されていない写真等の図面を提示して尋問することは、証人に不当な影響を与えるなどの特段の事情がない限り許される。 2. 提示された写真が証言内容を的確に把握するために資する場合、刑事訴訟規則49条に基づき、これを尋問調書に添付することができる。この措置に当事者の同意は不要である。 3. 写真自体が独立の証拠として採用されていない場合でも、証人がその内容を実質的に引用して証言したときは、引用された限度で証言の一部となり、証言全体を事実認定の基礎とすることができる。これは伝聞法則を潜脱するものではない。
事件番号: 平成20(あ)333 / 裁判年月日: 平成22年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯人の識別に関する目撃供述の信用性判断、および身体的疾患が犯行に与える影響についての事実誤認の有無が争われた事例。 第1 事案の概要:被告人は駅ホームで女性のスカート内に携帯電話を差し入れたとして都迷惑防止条例違反で起訴された。被害者は、背後から犯人に袖を掴まれ、その後も断続的に犯人の姿を視認して…
重要事実
痴漢(強制わいせつ)事件において、検察官は被害再現写真(甲24、25号証)の証拠調べを請求したが、弁護人は不同意とした。第1審の証人尋問において、検察官は被害者の具体的証言を得た後、供述の明確化のために当該写真を提示して尋問し、被害者は「証言内容は写真のとおりである」旨供述した。裁判所は写真を証拠採用しないまま尋問調書に添付し、第1審判決は被害者証言に基づき有罪を認定。被告人側が、証拠能力のない写真を用いた尋問及び調書添付は伝聞法則の潜脱であるとして上告した事案。
あてはめ
本件では、証人の具体的供述が十分になされた後に、その内容を視覚的に明確化する目的で写真が示されており、証人に不当な影響を与えたとはいえない。また、証人は写真の内容を引用する形で「写真のとおりである」と述べており、写真は証言内容を把握するために不可欠な図面として尋問調書に添付することが適切である。写真は独立した証拠として扱われているのではなく、引用された限度で証言内容の一部を構成しているにすぎないため、これに基づき事実認定を行うことは、伝聞例外の要件を潜脱するものとは認められない。
結論
本件の訴訟手続は正当であり、伝聞法則に関する法令違反はない。本件写真を証言の一部として事実認定に用いた第1審及びこれを是認した原判決に誤りはない。
実務上の射程
被害再現写真など、伝聞証拠として不同意となりやすい資料について、証言の「視覚的明確化」を理由とした提示・調書添付の適法性を認めた。答案上は、伝聞法則の潜脱が問題となる場面で、①提示の目的(供述の明確化)、②不当な影響の有無、③証言への実質的な引用の有無という枠組みで、事実認定の許容性を論じる際に活用する。
事件番号: 平成19(あ)1785 / 裁判年月日: 平成21年4月14日 / 結論: 破棄自判
1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行うべきである。 2 被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を…
事件番号: 平成8(あ)613 / 裁判年月日: 平成11年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白の任意性を疑うに足りる証跡が認められない場合、当該自白の証拠能力を否定する余地はなく、憲法38条2項等の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が自白を行った事件において、第一審判決後の第一次控訴審では無罪が言い渡されたが、検察官の上告を受けた第一次上告審がこれを破棄。差し戻し後の…