貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,Yとの間の債権譲渡基本契約に基づき,Aの顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,上記債権譲渡基本契約が,Yの国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金債権をYに移行し,その貸金業を廃止するために行われたもので,同契約にはAが顧客に対して負担する過払金返還債務をYが併存的に引き受ける旨の条項があったとしても,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,Yは,AのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。 ⑴ 上記債権譲渡基本契約には,個別の債権譲渡によりAの契約上の地位がYに移転する旨又はAの負担する過払金返還債務が当然にYに承継される旨を定めた条項はない。 ⑵ Xは,上記債権譲渡に係る通知を受けてから上記の併存的債務引受けに係る条項が効力を失うまでの間に,Yに対し,弁済をしただけであって,上記条項に係る受益の意思表示とみる余地のある行為をしていない。
貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,その顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,YがAのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえないとされた事例
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
判旨
貸金業者が貸付債権を他社に譲渡した際、当然に契約上の地位や過払金返還債務が承継されるわけではなく、第三者のためにする債務引受条項があっても受益の意思表示前に変更されれば債務は承継されない。
問題の所在(論点)
1. 債権譲渡に伴い、契約上の地位や過払金返還債務は当然に譲受人に承継されるか。 2. 第三者のためにする債務引受条項がある場合、譲渡通知に基づく「弁済」は受益の意思表示に該当するか。 3. 受益の意思表示前に債務引受条項を撤回・変更できるか。
規範
1. 貸付債権の一括譲渡において、契約上の地位の移転や過払金返還債務の承継が認められるかは譲渡合意の内容に依拠し、当然に移転・承継されるものではない。 2. 契約に債務引受条項(第三者のためにする契約)がある場合でも、受益の意思表示(民法537条2項)がなされる前であれば、合意により当該条項を変更・消滅させることができる。
事件番号: 平成22(受)1784 / 裁判年月日: 平成23年7月7日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…
重要事実
貸金業者Aは親会社である被上告人に対し、上告人に対する貸付債権(約定残債権)を譲渡した。譲渡に関する基本契約には、被上告人が過払金返還債務を併存的に引き受ける旨の条項(本件条項)があったが、後にAと被上告人は本件条項を削除する変更契約を締結した。上告人は、債権譲渡の通知を受けて被上告人に弁済を継続し、その後被上告人と新規の基本契約を締結したが、旧契約(第1取引)で発生していた過払金の返還を被上告人に求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件譲渡契約には地位の移転等の特約がないため、当然の承継は否定される。 2. 本件条項は第三者のためにする契約の性質を有するが、上告人が行った「弁済」は債権譲渡通知に基づく義務の履行にすぎず、過払金債権者として債務引受の利益を享受する「受益の意思表示」とは評価できない。 3. したがって、受益の意思表示がなされる前に締結された本件変更契約は有効であり、被上告人の債務引受義務は消滅したといえる。
結論
被上告人は第1取引に係る過払金返還債務を承継しておらず、上告人の請求は認められない(第2取引分を除く)。
実務上の射程
過払金債務の承継を否定したリーディングケース。債権譲渡における「地位の承継」の解釈指針を示すとともに、債権譲渡通知に伴う債務者の受動的行為(弁済)は直ちに受益の意思表示にはならないことを明らかにしており、民法537条・538条のあてはめにおいて重要である。
事件番号: 平成23(受)516 / 裁判年月日: 平成23年9月30日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,この際,Xが,Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ,これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,XとYとは,上記基本契約の…
事件番号: 平成22(受)1405 / 裁判年月日: 平成23年7月8日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…
事件番号: 平成24(受)2832 / 裁判年月日: 平成26年7月24日 / 結論: 破棄差戻
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定の毎月の返済額を超過する額の支払がされたときには,当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する債務に充当されることは…
事件番号: 平成26(受)2344 / 裁判年月日: 平成27年6月1日 / 結論: 棄却
異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした債務者が,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができる場合