1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償権は,破産債権である。 2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が取得する求償権を自働債権とし,主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は,破産法72条1項1号の類推適用により許されない。 (1,2につき補足意見がある。)
1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権の破産債権該当性 2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権を自働債権とする相殺の可否
(1,2につき)民法462条,破産法2条5項 (2につき)破産法67条1項,破産法72条1項1号
判旨
主たる債務者の委託を受けない保証人が、破産手続開始前の保証契約に基づき開始後に弁済して取得した求償権を自働債権とする相殺は、破産法72条1項1号の類推適用により許されない。
問題の所在(論点)
破産者の委託を受けない保証人(無委託保証人)が、破産手続開始後に弁済して取得した求償権を自働債権として、破産手続開始前から負担していた債務と相殺することができるか。破産法72条1項1号の類推適用の成否が問題となる。
規範
1. 無委託保証人が破産手続開始前の保証契約に基づき開始後に弁済して取得した求償権は、開始前の原因に基づくため破産債権(破産法2条5項)に当たる。 2. しかし、無委託保証人による相殺は、破産者の意思や法定原因に基づかず優先弁済を受ける債権を自ら作出するに等しく、その期待を保護すべき合理的理由を欠く。 3. このような相殺は、開始後に他人の破産債権を取得して相殺適状を作出する行為に類似し、債権者平等の原則に反するため、破産法72条1項1号を類推適用して禁止すべきである。
重要事実
銀行である被上告人は、債務者Bらの委託を受けないまま、Bらの買掛債務等につき第三者Hとの間で保証契約を締結した。その後Bらが破産手続開始の決定を受けたため、被上告人は保証債務を履行してBらに対する求償権を取得した。被上告人は、この求償権を自働債権とし、Bらが被上告人に対して有していた当座預金債権(預金返還請求権)を受働債権として相殺を主張した。
あてはめ
委託を受けた保証人の場合は、債務者が将来の相殺を容認しているといえるが、無委託保証人の場合は破産者の意思と無関係に優先的地位が作出される。これは、開始後に破産債権を行使する者が入れ替わることで相殺適状が生じる点において、同法72条1項1号が禁止する「開始後の他人の破産債権の取得」と実質的に異ならない。したがって、同号を類推適用すべきである。
結論
本件各相殺は破産法72条1項1号の類推適用により許されず、被上告人は預金債務の支払を拒めない。
実務上の射程
無委託保証による相殺の担保的機能を否定した重要判例である。司法試験においては、破産法上の相殺禁止(71条、72条)の趣旨である「債権者平等の原則」と「相殺への合理的期待」の調整を論じる際のリーディングケースとして活用する。委託の有無によって相殺の可否が分かれる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和47(オ)1316 / 裁判年月日: 昭和48年5月25日 / 結論: 棄却
債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。 (最大判昭和…