中小企業等協同組合法に基づいて設立された信用協同組合は,商法上の商人には当たらない。
信用協同組合の商人性
中小企業等協同組合法1条,中小企業等協同組合法3条,中小企業等協同組合法9条の8,商法4条
判旨
信用協同組合(信用組合)は商法上の商人に当たらず、その業務も営利を目的とするものではないため、信用組合が締結した預金契約に基づく債務は商法514条の「商行為によつて生じた債務」に該当しない。
問題の所在(論点)
信用協同組合(信用組合)が締結した預金契約に基づく返還債務について、その不履行による遅延損害金の利率として商事法定利率(商法514条)が適用されるか。信用組合の商人性(商法4条1項)および当該契約の商行為性(商法502条、503条)が問題となる。
規範
1. 信用組合は、組合員の事業・家計の助成を目的とする共同組織であり、その業務は営利を目的とするものではない。したがって、商法上の「商人」には当たらない。 2. 信用組合の業務は営利を目的としない以上、預金契約は「銀行取引」(商法502条8号)等の営業的商行為には該当しない。 3. 信用組合が商人でない以上、その行為は附属的商行為(商法503条)にも該当しない。 4. したがって、相手方が商人である等の事情がない限り、信用組合の預金返還債務は「商行為によって生じた債務」に当たらず、遅延損害金の利率は民事法定利率によるべきである。
重要事実
1. 被上告人は、信用組合である上告人の支店において普通預金口座を開設し、5億円を入金した(本件預金契約)。 2. 被上告人は上告人に対し、本件預金契約に基づき5億円の払戻しを求めたが、上告人がこれに応じなかった。 3. 被上告人が商人であることは、原審において確定されていない。 4. 上告人は中小企業等協同組合法に基づき設立された信用協同組合である。
あてはめ
1. 上告人は信用組合であり、その性格は組合員の助成を目的とする非営利の共同組織である。ゆえに、上告人は商人(商法4条)に該当しない。 2. 上告人の業務は非営利であるから、本件預金契約は商法502条8号の商行為に該当しない。また、被上告人が商人であると認められない以上、商法503条の適用もない。 3. 以上から、本件預金契約は商行為によって生じたものとはいえず、商法514条の商事法定利率(年6分)を適用する基礎を欠く。他方、債務不履行がある以上、民法所定の法定利率による責任は免れない。
結論
本件預金契約に基づく債務は商行為によって生じた債務とはいえないため、遅延損害金の利率は商事法定利率(年6分)ではなく、民法所定の法定利率(年5分)によるべきである。
実務上の射程
判決文からは不明(※本判決は商法改正および民法改正前の事案であるが、信用組合の非営利性・非商人性を判断した法理は、現行法下における商行為の成否判断においても重要な指針となる)。
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