農業協同組合が、理事との間で締結した消費貸借契約を有効なものとして扱い、右契約に基づく理事の債務の担保として提供された第三者の組合に対する預金をもつて右債務の弁済に充当した場合には、担保の提供者である第三者は、右消費貸借契約が農業協同組合法三三条に違反することを理由としてその無効を主張することはできない。
農業協同組合との間の消費貸借契約に基づく理事の債務について右組合に対する預金を担保として提供した第三者において農業協同組合法三三条違反を理由として右消費貸借契約の無効を主張することができないとされた事例
農業協同組合法33条
判旨
農業協同組合と理事との間の利益相反取引において、組合が契約を有効として扱い、第三者の提供した担保を債務弁済に充当した後は、当該理事や担保提供者から当該取引の無効を主張することは許されない。
問題の所在(論点)
農業協同組合法33条(利益相反取引における監事の代表権)に違反してなされた理事と組合との取引について、組合側がこれを有効として処理した後に、理事や担保提供者である第三者からその無効を主張できるか。
規範
農業協同組合法33条が「組合が理事と契約するときは、監事が組合を代表する」と定めた趣旨は、理事の代表権を制限することで、理事が組合の利益を犠牲にして私利を図ることを防止し、組合の利益を保護することにある。したがって、組合側が当該契約を有効なものとして取り扱い、契約に基づく債務の弁済が既に行われたような場合には、もはや組合の保護を目的とする同条に違反することを理由として、理事や担保提供者側から無効を主張することはできない。
重要事実
農業協同組合(被上告人)の理事Dが、組合から1500万円を借り受ける消費貸借契約を締結した。その際、第三者(上告人)は、自身の組合に対する預金をDの債務の担保に供することに同意し、これに基づき担保権設定契約がなされた。その後、組合はDの債務の弁済として上告人の預金を充当した。これに対し上告人は、Dと組合との間の消費貸借契約および担保権設定契約について、農協法33条に違反し監事が代表していないため無効であると主張した。
あてはめ
農協法33条の目的は専ら組合の利益保護にあるところ、本件では組合側が消費貸借契約を有効として取り扱い、既に提供された預金担保を債務の弁済に充当するという処理を行っている。このように、本来保護されるべき主体である組合自身が契約を有効なものとして受け入れている状況下においては、契約の相手方である理事Dはもちろん、担保を提供した上告人も、同条違反を理由として事後的に契約の無効を主張することは信義則上あるいは同条の趣旨からして許されない。これは、上告人がDに担保設定の権限を付与し、Dが上告人を代理して契約を締結した場合であっても同様である。
結論
本件各契約の無効主張は認められない。上告人の請求を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
株式会社法における取締役の自己取引(356条1項2号等)の制限規定についても、会社保護を趣旨とする点で共通するため、会社側が追認した場合や有効として扱った場合に、相手方や第三者から無効主張を制限する際の類推適用が可能である。また、代表権の制限に違反した行為の効力について、相対的無効(主張権者の限定)の考え方を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)28 / 裁判年月日: 昭和32年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仲立人は他人の間に入って商行為の媒介を行う者を指し、自己の名で相手方のために契約を締結し、または相手方の代理人として契約を締結する権限を有するものではない。したがって、仲立人と代理人の概念は互いに相容れないものである。 第1 事案の概要:被上告人は、訴外Dに対し、その事業である払下物資の買受適格者…