判旨
中小企業等協同組合において理事が組合と契約(自己取引)を行う場合、改正前の中小企業等協同組合法38条が適用される時期においては、監事が組合を代表して当該行為を行う必要があり、単に理事会の承認を得ただけでは直ちに有効とは認められない。
問題の所在(論点)
理事が組合と取引を行う自己取引において、改正前の中小企業等協同組合法38条の適用がある場合、適法な代表権限を有する者(監事)によらずになされた行為の有効性をいかに判断すべきか。
規範
中小企業等協同組合法38条(昭和26年改正前)によれば、組合が理事と契約(自己取引)を行う場合には、監事が組合を代表しなければならない。また、改正後の同条は理事会の承認により民法108条を排除する旨を定めているが、法の施行時期によって適用すべき法規を厳格に峻別し、当時の代表権限の有無を判断の基準とすべきである。
重要事実
中小企業等協同組合法に基づき設立されたD工業企業組合の理事であった被上告人に対し、昭和26年5月1日、同組合から本件手形の裏書がなされた。原審は、この裏書が同日の組合理事会の議決を経て行われたことを理由に、改正後の中小企業等協同組合法38条を適用し、民法108条の適用が排除され有効であると判断した。しかし、改正後の規定は昭和26年7月1日施行であり、本件裏書当時は「監事が組合を代表する」旨を定めた改正前の規定が施行されていた。
あてはめ
本件裏書が行われた昭和26年5月1日時点では、改正前の同法38条が施行されていた。同条は「組合が理事と契約するときは、監事が組合を代表する」と規定しており、自己取引の有効性を判断するには、単なる理事会の承認の有無ではなく、組合を代表する監事が裏書を行ったか否か、およびその裏書が手形行為の方式に従って適法になされたか否かを検討する必要がある。原審は改正後の規定に基づき理事会の承認のみをもって有効と断定しており、監事の代表行為の有無について審理を尽くしていない。
結論
本件手形裏書の効力を判断するにあたっては、改正前の同法38条に従い、監事が組合を代表して裏書を行ったか否かを審理すべきである。それを行わずに有効とした原判決には審理不尽・理由不備があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
自己取引における代表権の所在を定めた特別法がある場合、その施行時期と行為時期を照らし、適用される法規を特定した上で、適法な代表権限を有する者による行為かを確認する必要がある。現在の会社法356条・365条等における理事会承認の構成とは異なり、当時の監事代表制下では監事の関与が不可欠であるという法規適用の厳格性を示す。答案上は、特別法による民法108条の修正範囲を確定する際の参考となる。
事件番号: 昭和38(オ)896 / 裁判年月日: 昭和39年7月9日 / 結論: 棄却
銀行との間の手形取引契約につき締結された連帯保証契約において、その保証する主債務者の債務の範囲が、主債務者が銀行に対して割引を求めるため裏書譲渡した手形についてのみならず、その振出、引受、裏書もしくは保証した手形であって銀行が他より入手した一切の手形について及ぶものとする約定も、原審確定の事実関係の下においては(原判決…