支店長代理は、商法第四二条にいう「支店ノ営業ノ主任者タルコトヲ示スベキ名称ヲ附シタル使用人」にあたらない。
支店長代理と商法第四二条の適用の有無
商法42条
判旨
「支店長代理」の名称は、商法上の表見支配人(現行商法24条、会社法13条)には該当せず、また、退職後の行為について表見代理(民法112条、110条)が成立するためには、相手方が権限があると信ずべき正当な理由を具体的に主張立証する必要がある。
問題の所在(論点)
1. 「支店長代理」という職名が商法上の表見支配人(現行商法24条、会社法13条)における「主任者であることを示す名称」に該当するか。 2. 代理権のない支店長代理が退職後に行った手形行為について、民法112条および110条の重畳適用により表見代理が成立するか。
規範
1. 商法上の表見支配人の成否について、「支店長代理」という名称は、現任の支店長が存在する以上、当然には「営業の主任者たることを示す名称」には当たらない。 2. 民法112条(代理権消滅後の表見代理)及び110条(権限外の行為)の重畳適用について、在任中に手形行為等の権限がなかった者の退職後の行為について責任を追及するには、相手方がその権限があると信ずべき「正当な理由」が必要であり、単に「支店長代理には一般に権限がある」との前提のみでは足りない。
重要事実
銀行の支店長代理であったDが、退職後に銀行の名義で手形の引受・保証行為を行った。上告人(相手方)は、銀行に対して表見支配人(商法42条・当時)または表見代理(民法109条、110条、112条)の成立を主張して責任を追及した。原審は、Dには在任中から手形行為の権限がなく、また支店長代理という職名自体から手形行為の代理権があるとの表示も認められないとして、請求を棄却した。
あてはめ
1. 現任の支店長が存在する支店において、支店長代理は営業に関する一切の行為をなす権限を有しないのが通常であり、その名称自体から主任者と認めることはできない。 2. Dは在任中も手形行為の権限を全く有していなかった。したがって、退職後の行為について民法112条を適用し得るとしても、本来の権限外の行為である以上、さらに110条の要件を満たす必要がある。 3. 上告人は「銀行において支店長代理は一般に手形行為の権限がある」と信じるのが当然であると主張するが、そのような事実は顕著な事実ではなく、正当な理由を基礎づける客観的根拠に欠ける。
結論
「支店長代理」は表見支配人には当たらず、また代理権消滅後の権限外の行為について、相手方が権限があると信ずべき正当な理由が認められないため、表見代理は成立しない。
実務上の射程
役職名に基づく表見支配人の成否の判断基準を示すとともに、民法112条と110条の重畳適用を認める前提として、在任中の基本代理権の有無および「正当な理由」の具体的な主張立証を要求する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)204 / 裁判年月日: 昭和36年12月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、その事項に関する手形行為を行う権限を有し、代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない。また、民法110条を適用する場合の「第三者」には、直接の相手方のみならず、その後手形を取得した所持人も含まれる。 第1 事案の概要:使用人Dは、被上告会社において…