統一手形用紙に基づく為替手形においても、その支払人の記載が明白なあやまりでない以上、右支払人と表示された者以外の者のした手形引受は無効と解すべきである。
為替手形の支払人の記載が誤記でないとして、その記載以外の者が引き受けた行為を無効とした事例
手形法28条
判旨
手形行為の解釈は、手形行為の外観を重視すべきであり、手形面の記載以外の事実に基づいて行為者の意思を推測し、記載内容を変更したり補充解釈したりすることは許されない。
問題の所在(論点)
為替手形の引受において、手形面上に記載された支払人と異なる者が引受をした場合、手形面以外の事実(行為者の主観的意図等)を考慮して、当該引受を有効と解釈することができるか。手形行為の解釈の在り方が問題となる。
規範
手形行為は、手形の流通を確保し、取引の安全を図る観点から、その外観を重視して客観的に解釈すべきである。したがって、手形面の記載以外の事実に基づいて行為者の真意を推測し、記載内容を変更したり補充解釈したりすることは原則として許されない。ただし、記載内容が明白な誤謬(誤記)であると認められる場合に限り、例外的な解釈の余地がある。
重要事実
本件為替手形において、支払人として「訴外D」の名称が記載されていた。一方で、被上告人が当該手形に引受の署名を行ったが、手形面上、支払人の記載自体は被上告人の名称に変更されていなかった。上告人は、実質的な意思に基づき被上告人を支払人と解釈すべきであると主張して、被上告人に対し引受人としての責任を追及した。
あてはめ
本件手形面には「支払人D」と明記されており、被上告人が支払人であるとの記載はない。手形行為の外観重視の原則に照らせば、記載以外の事情から行為者の意思を推測して「支払人は被上告人である」と読み替えることはできない。また、支払人Dという記載が客観的にみて「被上告人」の明白な誤記であるとも認められない。したがって、支払人でない被上告人が行った引受は、為替手形の構造上(手形法1条3号・28条1項)、無効といわざるを得ない。
結論
被上告人の引受は無効である。手形面上の支払人と異なる者による引受は、特段の事情がない限り、引受人としての責任を発生させない。
実務上の射程
手形行為の文言性(客観的解釈の原則)を端的に示した重要判例である。答案上は、記載の脱漏や誤りがある際の補充解釈の可否を論じる場面で、本判例を引用して「外観重視・手形外の事情による推論禁止」を明示すべきである。ただし、明白な誤記の法理により救済される余地が残されている点にも留意が必要である。
事件番号: 昭和39(オ)815 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 破棄差戻
銀行との当座預金取引および手形行為について自己の氏名商号の使用を許諾したにすぎない者は、右許諾を受けた者が許諾者名義で引き受けた為替手形につき、商法第二三条による責任を負わない。