銀行との間の手形取引契約につき締結された連帯保証契約において、その保証する主債務者の債務の範囲が、主債務者が銀行に対して割引を求めるため裏書譲渡した手形についてのみならず、その振出、引受、裏書もしくは保証した手形であって銀行が他より入手した一切の手形について及ぶものとする約定も、原審確定の事実関係の下においては(原判決参照)、公序良俗に反するものではない。
銀行との間の手形取引契約につき締結された連帯保証契約の範囲に関する約定が公序良俗に反しないとされた事例。
民法90条
判旨
取締役が会社の債務を個人で連帯保証する契約につき、保証の対象が特定の取引のみならず会社が振り出し、あるいは裏書等をした手形債務全般に及ぶ場合であっても、公序良俗に反し無効とはならない。
問題の所在(論点)
取締役が会社の債務についてなす広範な連帯保証契約が、公序良俗(民法90条)に反して無効となるか。特に、特定の取引に限られない包括的な手形債務の保証が許容されるかが問題となる。
規範
連帯保証契約が公序良俗(民法90条)に反して無効となるか否かは、保証債務の範囲、保証人の地位、契約締結の経緯、及び債権者と保証人の利益状況等を総合的に考慮して判断される。取締役が自社の広範な手形債務を保証する場合であっても、その包括性のみをもって直ちに公序良俗違反とはならない。
重要事実
上告会社(債務者)の取締役である上告人A1およびA2は、被上告会社(債権者)に対し、上告会社の債務について連帯保証契約を締結した。その保証範囲は、上告会社が割引のために裏書譲渡した手形による債務だけでなく、上告会社が振出、引受、裏書または保証した手形から生じる一切の債務に及ぶものであった。上告人らは、この保証範囲が広範すぎることを理由に公序良俗違反を主張した。
あてはめ
本件における連帯保証は、会社の経営を担う取締役が、会社の資金繰りや取引継続のために行ったものである。保証の対象は、会社が関与する手形債務全般(振出、引受、裏書、保証)と広範ではあるが、会社の事業活動に伴う債務に限定されており、取締役という立場に照らせば、過度な負担を一方的に強いる不当な契約とはいえない。したがって、原審の認定した事実関係に基づけば、公序良俗に反する特段の事情は認められない。
結論
本件連帯保証契約は公序良俗に反せず有効である。上告人ら(取締役)は、会社の包括的な手形債務について保証責任を免れない。
実務上の射程
経営者によるいわゆる個人保証(経営者保証)の有効性を肯定した事例である。現在の実務では「経営者保証に関するガイドライン」等による規律があるが、理論的には、取締役が自社の債務を包括的に保証することは、公序良俗違反のハードルが非常に高いことを示している。答案上は、保証範囲が不明確または広大であることを理由に90条違反を検討する際の否定的な例証として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)656 / 裁判年月日: 昭和32年7月25日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】中小企業等協同組合において理事が組合と契約(自己取引)を行う場合、改正前の中小企業等協同組合法38条が適用される時期においては、監事が組合を代表して当該行為を行う必要があり、単に理事会の承認を得ただけでは直ちに有効とは認められない。 第1 事案の概要:中小企業等協同組合法に基づき設立されたD工業企…