判旨
会社の目的の範囲内といえるかは、定款の記載から客観的・抽象的に判断すべきであり、特定の個人に対する手形裏書も、定款上の目的に照らし客観的に必要であり得る限り、会社の目的の範囲に属する。
問題の所在(論点)
株式会社の代表者が行った手形裏書が、定款に定められた目的の範囲内に属するか否かの判断基準が問題となる。
規範
会社の能力を定めた「目的の範囲内」(会社法27条1号等)の行為とは、定款に明示された目的自体のみならず、その遂行に直接または間接に必要な行為を含む。その必要性の有無は、行為の具体的・主観的な意図にかかわらず、定款の記載自体から観察して「客観的・抽象的に必要であり得べきか否か」という基準に従って決すべきである。
重要事実
上告会社において、代表者(A2)が、特定の個人(A1)のために、A1が振り出した手形に対して会社名義で裏書を行った。上告会社は、この手形裏書が会社の目的の範囲外の行為であり無効であると主張して争った。
あてはめ
上告会社の定款には特定の事業目的が掲記されているところ(詳細は判決文からは不明)、代表者が個人(A1)の振出にかかる手形に裏書をすることは、定款上の目的を遂行する上で、客観的・抽象的な観点からは必要であり得る行為といえる。したがって、本件裏書は会社の目的の範囲内にあると解される。
結論
本件手形裏書は会社の目的の範囲内に属し、有効である。また、本件行為は商法265条(現行会社法356条1項等の利益相反取引)にも該当しない。
実務上の射程
権利能力の制限(目的による制約)を極めて限定的に解釈し、取引の安全を重視する判例法理を確立した。実務上、定款の目的条項は広く解釈され、特段の事情がない限り「客観的・抽象的な必要性」が肯定されるため、目的外を理由に行為の無効を主張することは困難である。答案上は、まず本基準を示し、定款の文言から形式的に必要性が肯定できるかを論じる。
事件番号: 昭和31(オ)1046 / 裁判年月日: 昭和34年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裏書が連続している手形の所持人は、手形法16条1項により権利を行使する資格が認められ、中間に無権代理や偽造等の実質的に無効な裏書が含まれていても裏書の連続は妨げられない。この場合、所持人に悪意または重過失がない限り、実質上の権利者であるか否かを問わず手形上の権利を行使することができる。 第1 事案…