中小企業等協同組合法に基き設立された信用協同組合が、法定の除外例にあたらない組合員以外の者から預金を受け入れた場合でも、組合役員が同法所定の罰則の適用を受けることがあるのは格別、右預金契約自体、公序良俗違反あるいは目的の範囲外の行為として無効となるものではない。
中小企業等協同組合法に基く信用協同組合が法定の除外例にあたらない組合員以外の者から受入れた預金契約の効力。
中小企業等協同組合法76条(昭和30年法律121号による改正前)9条の8,中小企業等協同組合法76条(昭和30年法律121号による改正前)112条,民法43条,民法90条
判旨
信用協同組合が組合員以外の者から預金を受け入れる行為は、中小企業等協同組合法上の禁止規定に抵触し、役員が罰則の適用を受けることがあるとしても、直ちに公序良俗に反し、または法人の目的の範囲外の行為として私法上無効になるものではない。
問題の所在(論点)
信用協同組合が、法令で禁止されている「非組合員からの預金受入れ」を行った場合、当該預金契約は民法34条(法人の能力)に違反する目的外の行為として、あるいは公序良俗違反として、私法上無効となるか。
規範
法人が法令上の制限に違反して行った行為であっても、当該法令の目的に照らし、その行為自体が法人の本来の事業遂行に不適当なものであるといえず、かつ公序良俗に反するものと認められない限り、民法34条(旧43条)の目的範囲外の行為として、または私法上の規定に反して無効となるものではない。
重要事実
上告人(信用組合)は、中小企業等協同組合法に基づき設立された法人である。同法は、信用協同組合が原則として組合員以外の者から預金を受け入れることを禁止している(同法9条の8参照)。しかし、上告人の役員は、組合の名において、非組合員である被上告人との間で預金契約を締結した。上告人は、当該契約が法令の禁止規定に抵触し、法人の目的範囲外の行為であり無効であると主張して、預金の払い戻しを拒んだ。
あてはめ
中小企業等協同組合法1条が掲げる、中小企業の経済的地位の向上という目的を考慮すると、非組合員からの預金受入れ行為そのものが、組合の本来の事業遂行に不適当であるとは断じがたい。また、法令に違反する役員が罰則の適用を受けることはあっても、契約自体が公序良俗に反するほど反社会的なものとは認められない。したがって、本件預金契約は法人の存立目的の範囲外の行為とはいえず、私法上の効力を有すると評価される。
結論
本件預金契約は有効である。したがって、信用組合は非組合員に対しても預金返還義務を負う。
実務上の射程
行政法規(取締規定)に違反する行為であっても、その私法上の効力が直ちに否定されるわけではないという「取締規定と効力規定の区別」の議論において、法人の能力(民法34条)との関係で参照される。法人の事業に関連し、取引の安全を重視すべき場面での目的範囲の解釈を柔軟に行う姿勢を示したものといえる。
事件番号: 昭和48(オ)270 / 裁判年月日: 昭和50年1月30日 / 結論: 破棄差戻
信用組合が職員に対して職員外の者に職員定期預金を利用させることを禁止しているのを知りながら職員外の者が右組合の営業部預金課員の勧誘により同人を通じて右定期預金をした場合でも、職員定期預金でなければ預金をしないことが明らかであつた等特段の事情のないかぎり、右預金契約は一般定期預金として有効に成立し、右預金の払戻に関する右…