酌婦としての稼働契約が公序良俗に反し無効である場合には、これに伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求は許されない。
酌婦としての稼働契約に伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求の許容
民法90条,民法708条
判旨
酌婦稼働の対価として消費貸借名義で前借金を受領した場合、稼働契約と消費貸借は不可分の関係にあり、一部の無効は契約全体の無効を招く。また、貸主側にも不法の原因がある以上、民法708条に基づき貸金の返還請求は認められない。
問題の所在(論点)
酌婦稼働契約という公序良俗に反する特約が付された消費貸借契約において、特約の無効が契約全体に及ぶか(一部無効が全部無効となるか)、および不法原因給付(民法708条)の成否が問題となる。
規範
契約の一部に公序良俗違反(民法90条)がある場合、その部分と他の部分が密接に関連し、互いに不可分の関係にあるときは、契約全体が無効となる。また、返還請求の可否については、不法な原因が給付者(貸主)側にも認められる場合には、民法708条本文により不法原因給付としてその返還を求めることができない。
重要事実
上告人A1は、被上告人の先代Dから4万円を借り受け、A2が連帯保証した。その際、A1の娘E(当時16歳未満)がDの経営する料理屋で酌婦として稼働し、その報酬の半分を返済に充てる特約を結んだ。A1はEを働かせる対価として金員を受領し、DもEの稼働を目当てに貸し付けたという実態があった。その後、報酬が返済に充てられなかったため、被上告人が貸金の返還を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、A1による金員受領と娘Eの酌婦稼働とは、前借金としての性格を有しており、両者は密接に関連して不可分の関係にある。したがって、公序良俗に反する稼働契約の無効は、消費貸借契約全体の無効を来す。また、本件契約における不法の原因は、年少者を酌婦として働かせようとした貸主側にも存するため、民法708条の「不法な原因」が給付者に認められ、貸金の返還請求は許されないと解される。
結論
消費貸借契約および連帯保証契約はともに無効であり、不法原因給付に該当するため、被上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
契約の一部に公序良俗違反がある場合の全部無効の判断基準(不可分性)を示すとともに、前借金による人身拘束を伴う貸付が不法原因給付に該当し、債権回収が不能となることを明示した重要判例である。
事件番号: 昭和48(オ)270 / 裁判年月日: 昭和50年1月30日 / 結論: 破棄差戻
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