地方公共団体甲から公共工事を請け負った者乙が保証事業会社丙の保証の下に前払金の支払を受けた場合において,甲と乙との請負契約には前払金を当該工事の必要経費以外に支出してはならないことが定められ,また,この前払の前提として甲と乙との合意内容となっていた乙丙間の前払金保証約款には,前払金が別口普通預金として保管されなければならないこと,預金の払戻しについても預託金融機関に適正な使途に関する資料を提出してその確認を受けなければならないこと等が規定されていたなど判示の事実関係の下においては,甲と乙との間で,甲を委託者,乙を受託者,前払金を信託財産とし,これを当該工事の必要経費の支払に充てることを目的とした信託契約が成立したと解するのが相当である。
公共工事の請負者が保証事業会社の保証の下に地方公共団体から支払を受けた前払金について地方公共団体と請負者との間の信託契約の成立が認められた事例
信託法1条,公共工事の前払金保証事業に関する法律(平成11年法律第160号による改正前のもの)12条1項
判旨
公共工事の前払金が指定口座に預託された場合、発注者を委託者兼受益者、請負者を受託者とする信託契約が成立し、当該預金は信託財産として請負者の固有財産(破産財団)から除外される。
問題の所在(論点)
公共工事の前払金が、請負者の指定した別口預金口座に払い込まれた場合、当該預金債権は請負者の破産財団に帰属するか。前払金の法的性質と信託の成否が問題となる。
規範
公共工事の前払金制度の趣旨(使途制限)及び保証事業法に基づく保証約款の規定に照らし、前払金が別口預金口座に払い込まれた時点で、発注者を委託者、請負者を受託者、前払金を信託財産とし、工事の必要経費への充当を目的とする信託契約が成立する。この場合、前払金は請負者の一般財産から分別管理され特定性を有するため、登記・登録がなくとも第三者に対抗でき、受託者の破産財団に属さない(信託法旧16条・現25条1項参照)。
重要事実
事件番号: 平成11(受)1172 / 裁判年月日: 平成15年2月21日 / 結論: 破棄自判
損害保険会社甲の損害保険代理店である乙が,保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で金融機関に「甲代理店乙」名義の普通預金口座を開設したが,甲が乙に金融機関との間での普通預金契約締結の代理権を授与しておらず,同預金口座の通帳及び届出印を乙が保管し,乙のみが同預金口座への入金及び同預金口座からの払戻し事務を行ってい…
地方公共団体たる愛知県は、請負会社Aと工事契約を締結し、保証会社Bの保証の下で前払金を支払った。保証約款には、前払金を指定金融機関の別口預金とすること、使途を当該工事に限定すること、Bの監査を受けること等が定められていた。Aは指定の信用金庫に別口預金口座を開設し、県から前払金の振込みを受けたが、その後Aが営業停止となり、県は工事契約を解除。Bは県に保証債務を履行した。Aの破産管財人は、当該預金はAの固有財産(破産財団)であると主張して、信用金庫等に対し預金の支払を求めた。
あてはめ
本件保証約款では、前払金の預託先指定、使途制限、預託金融機関による確認、保証会社による監査等が厳格に規定されており、これらは県とAの合意内容となっていた。この合意により、前払金は当該工事の必要経費に充てる目的で受託者に委託された信託財産といえる。また、受託事務の成果は発注者に帰属する出来高に反映されるため、発注者が受益者となる。本件預金は別口口座として分別管理されており、特定性が認められるため、信託法上の対抗要件も具備している。したがって、預金から適正に払い出されない限り、Aの固有財産にはならない。
結論
本件預金は信託財産であり、受託者Aの破産財団には組み入れられない。管財人の請求は棄却される。
実務上の射程
公共工事の前払金返還債務をめぐる破産・差押えの場面で、その財産的独立性を根拠付けるための重要判例。倒産隔離機能の理論的構成として信託を活用しており、別口預金による分別管理の重要性を示している。
事件番号: 平成17(受)1192 / 裁判年月日: 平成18年6月23日 / 結論: その他
中小企業等協同組合法に基づいて設立された信用協同組合は,商法上の商人には当たらない。
事件番号: 平成16(受)2134 / 裁判年月日: 平成17年7月11日 / 結論: その他
甲銀行に対し預金債権を有していた丁の死亡により,乙,丙及び戊が当該預金債権を相続したのに,甲銀行が当該預金債権の全額を乙及び丙に払い戻したこと,乙及び丙は,戊の法定相続分相当額の預金については,これを受領する権限がなかったにもかかわらず,払戻しを受けたものであり,この払戻しが債権の準占有者に対する弁済に当たるということ…