裁判員制度と憲法32条,37条1項,76条1項,3項,78条,80条
憲法32条,憲法37条,憲法76条,憲法78条,憲法80条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
判旨
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員制度)が、憲法32条、37条1項、76条1項・3項、78条、80条に違反するか。
問題の所在(論点)
裁判員制度が、憲法が定める司法権の行使主体としての裁判所の定義や、裁判官の身分保障、国民の裁判を受ける権利に抵触するか否か。
規範
裁判員制度は、国民が裁判官と共に刑事裁判に参加する仕組みであるが、憲法が規定する「裁判所」の構成(76条1項)や「裁判官」の独立(76条3項)等の諸規定に照らして、合憲であると解される。具体的には、裁判官の専門性と国民の良識を融合させる合理的な制度設計であれば、司法権の行使主体としての性質を損なわず、裁判を受ける権利(32条)や公平な裁判所の審理を受ける権利(37条1項)をも保障するものといえる。
重要事実
本件は、集団強姦致傷、わいせつ略取、監禁等の罪に問われた被告人が、裁判員制度による裁判を受けた事案である。被告人側は、裁判員制度が憲法32条(裁判を受ける権利)、37条1項(公平な裁判所の審理)、76条1項・3項(司法権の独占と裁判官の独立)、78条、80条(裁判官の身分保障等)に違反するとして、同制度の違憲性を主張し上告した。
あてはめ
本判決は、先行する最高裁大法廷判決(平成23年11月16日判決)を引用する形式をとっている。当該大法廷判決の趣旨に照らせば、裁判員制度は、憲法が予定する統治機構の枠組みにおいて、司法の国民的基盤を確固たるものにするという正当な目的を有し、専門官である裁判官が審理・判決の主導権を確保しつつ国民の参加を仰ぐものである。したがって、憲法76条以下が定める職業裁判官による司法の原則を否定するものではなく、かつ32条や37条1項が保障する適正な刑事裁判の手続的保障を侵害するものでもないと評価される。
事件番号: 平成23(あ)13 / 裁判年月日: 平成24年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判員制度の憲法適合性 第1 事案の概要:被告人は、建造物侵入、強盗致傷、強盗の罪により起訴された。本件は裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)に基づき、裁判員が参加する公判手続によって審理が行われた。これに対し弁護人は、裁判員制度自体が憲法に違反するものであるとして、上告を申し立てた。…
結論
裁判員制度は憲法32条、37条1項、76条1項・3項、78条、80条のいずれにも違反せず、合憲である。
実務上の射程
裁判員制度の違憲論については既に最高裁大法廷判決(平成23年)により決着がついており、本判決はその判例を再確認したものである。答案作成上は、詳細な憲法論を展開するよりも、大法廷判決が示した「司法の国民的基盤の確立」という目的と、「裁判官による主導権の保持」という構造的側面から簡潔に合憲性を肯定すれば足りる。
事件番号: 平成22(あ)1299 / 裁判年月日: 平成24年1月13日 / 結論: 棄却
裁判員制度による審理裁判を受けるか否かについて被告人に選択権が認められていないからといって,同制度は憲法32条,37条に違反しない。
事件番号: 平成22(あ)1196 / 裁判年月日: 平成23年11月16日 / 結論: 棄却
1 憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。 2 裁判員制度は,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項に違反しない。 3 裁判員制度は,憲法76条3項に違反しない。 4 裁判員制度は,憲法…