1 憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。 2 裁判員制度は,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項に違反しない。 3 裁判員制度は,憲法76条3項に違反しない。 4 裁判員制度は,憲法76条2項に違反しない。 5 裁判員の職務等は,憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらない。
1 刑事裁判における国民の司法参加と憲法 2 裁判員制度と憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項 3 裁判員制度と憲法76条3項 4 裁判員制度と憲法76条2項 5 裁判員の職務等と憲法18条後段が禁ずる「苦役」
(1〜4につき) 憲法76条 (1,2につき) 憲法31条,憲法32条,憲法37条,憲法80条 (1につき) 憲法前文第1段,憲法33条,憲法34条,憲法35条,憲法36条,憲法38条,憲法39条,憲法78条,憲法79条,大日本帝国憲法24条,裁判所法3条3項 (2〜5につき) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律1条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条2項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条3項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律6条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律9条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律16条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律51条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律66条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第16条第8号に規定するやむを得ない事由を定める政令 (5につき) 憲法18条後段
判旨
裁判員制度は、憲法が一般的に国民の司法参加を許容していることに鑑み、裁判官を裁判の基本的な担い手としつつ、適正な刑事裁判を実現するための諸原則を確保する仕組みを備えているため、憲法31条、32条、37条1項、76条、80条1項等に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判員法に基づき、裁判官以外の国民(裁判員)が裁判体の構成員となり評決権を持って刑事裁判を行う「裁判員制度」は、憲法31条、32条、37条1項、76条、80条1項等に照らして合憲か。
規範
憲法は刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定しているが、国民の司法参加を一般的に禁止してはいない。司法参加制度の合憲性は、具体的に設けられた制度が、適正な刑事裁判を実現するための諸原則(適正手続、公平な裁判所、裁判官の独立等)に抵触するか否かによって決せられる。具体的には、裁判官が裁判の基本的な担い手としての役割を果たし、法と証拠に基づく適正な裁判が制度的に保障されている限り、その内容は立法政策に委ねられる。
事件番号: 平成22(あ)1299 / 裁判年月日: 平成24年1月13日 / 結論: 棄却
裁判員制度による審理裁判を受けるか否かについて被告人に選択権が認められていないからといって,同制度は憲法32条,37条に違反しない。
重要事実
被告人は、裁判員が参加する合議体によって懲役刑の判決を受けた。これに対し弁護人は、①憲法上の「裁判所」は裁判官のみで構成されるべきであり、裁判員制度は裁判を受ける権利(32条、37条1項)や司法権の帰属(76条1項)に反する、②裁判官が裁判員の意見に拘束されるのは職権行使の独立(76条3項)に反する、③特別裁判所の禁止(76条2項)や苦役の禁止(18条)に反する、として憲法違反を主張して上告した。
あてはめ
裁判員制度では、①裁判官3名と裁判員6名が対等に評議・評決を行うが、法令解釈や訴訟手続の判断は裁判官に委ねられ、評決には必ず1名以上の裁判官の賛成を要する等、裁判官が基本的な担い手として機能している。②裁判員は無作為抽出され公平性・中立性が担保され、守秘義務や請託禁止等の措置により公正な判断が期待できる。③裁判官が裁判員の意見に拘束されることがあっても、それは憲法が許容する司法参加を具体化した法律に基づく拘束であり、職権行使の独立を侵害しない。④当該裁判体は地方裁判所に属し上訴も可能であるため特別裁判所には当たらない。⑤裁判員の職務は国民的基盤の強化という公的意義を有し、辞退制度や経済的補償も備わっているため「苦役」には当たらない。
結論
裁判員制度は、適正な刑事裁判を保障する制度的枠組みを備えており、憲法各条項に違反しない。
実務上の射程
裁判員制度の根幹に関わる合憲性判断のリーディングケースである。司法参加の許容性を認める文理上の根拠(「裁判官」から「裁判所」への変更)や、立法政策の裁量を認める論理は、将来的な制度改正の合憲性検討にも射程が及ぶ。答案上は、裁判所の構成や適正手続の議論において、国民の司法参加が憲法の予定内であることを示す際に引用する。
事件番号: 昭和49(あ)1185 / 裁判年月日: 昭和49年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決の余罪を量刑の資料として考慮することは、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法31条に違反せず許容される。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、第一審裁判所が被告人の余罪を量刑の資料として用いた。弁護人は、これが実質的に余罪を処罰するものであるとして、憲法31条(適正手続)違反…
事件番号: 平成24(あ)167 / 裁判年月日: 平成25年4月16日 / 結論: 棄却
覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され,その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では,特段の事情がない限り,…
事件番号: 平成23(あ)757 / 裁判年月日: 平成24年2月13日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法382条の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいう。 2 控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある。 3 覚せい剤を密輸入した事件について覚せい剤を輸入する認識がなかっ…
事件番号: 昭和55(あ)1292 / 裁判年月日: 昭和55年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、原審における主張・判断を経ない事項に関する憲法違反の主張や、原判決が判断を示していない事項に関する判例違反の主張などは、適法な上告理由に当たらないことを示したものである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に対し、憲法38条1項違反および判例違反等を理由として上告を申し立てた。しかし、憲…