1 取締役会が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効である。 2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,当該特別決議を欠く瑕疵は上記株式発行の無効原因になる。 3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは,上記行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行には,無効原因がある。 (1〜3につき補足意見がある。)
1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けた取締役会が定めた新株予約権の行使条件をその発行後に変更する取締役会決議の効力 2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法によってされた募集株式発行の効力 3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権の行使条件に反した当該新株予約権の行使による株式発行に無効原因がある場合
(1につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ20第2項6号,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項 (2,3につき)会社法828条1項2号 (2につき)会社法199条,会社法201条1項 (3につき)会社法238条,会社法240条1項
判旨
非公開会社において、新株予約権の行使条件が発行趣旨に照らして重要な内容を構成する場合、その条件に反した行使による株式発行は、既存株主の利益を保護する会社法の趣旨に鑑み、原則として無効原因となる。
問題の所在(論点)
1. 取締役会が、株主総会から委任を受けて定めた新株予約権の行使条件を発行後に変更できるか。 2. 非公開会社において、有効な行使条件に違反してされた株式発行に無効原因が認められるか。
規範
1. 株主総会から取締役会への行使条件決定の委任は、別段の明示がない限り、発行後に条件を実質的に変更することまで含むものではなく、細目的な変更を除き、変更決議は無効である。 2. 非公開会社において、株主総会が定めた(または委任に基づき確定した)重要な行使条件に違反してされた株式発行は、株主総会の特別決議を経ない第三者割当発行と同様、既存株主の持株比率維持の利益を著しく害するため、特段の事情がない限り、会社法828条1項2号の無効原因となる。
重要事実
非公開会社である上告人は、役員の意欲向上を目的として、ストックオプション(本件新株予約権)を発行した。株主総会決議では行使条件の細部を取締役会に委任し、取締役会は「株式の上場後6ヶ月が経過するまで行使不可」とする上場条件を付した。その後、不祥事により上場が困難となったため、取締役会は上場条件を撤廃する変更決議を行い、補助参加人らは変更後の条件に基づき権利を行使して株式の発行を受けた。監査役である被上告人が、この株式発行の無効を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件の上場条件は、取締役会への委任に基づき定められたが、一旦確定した条件を発行後に変更する明示の委任は存在しない。上場条件の撤廃は単なる細目的変更ではなく実質的変更に当たるため、変更決議は無効であり、当初の上場条件が維持される。 2. 上告人は非公開会社であり、既存株主の持株比率に対する期待が強く保護される。上場条件は本件予約権の発行目的(インセンティブ)の根幹をなす「重要な内容」である。これに違反した発行は、株主総会の意思に反して持株比率を変動させるものであり、手続上の重大な瑕疵があるといえる。
結論
本件株式発行には無効原因がある。上場条件を撤廃した取締役会決議は無効であり、条件未成就のままなされた本件発行は、非公開会社における既存株主の利益を著しく侵害する重大な法令違反に当たる。
実務上の射程
非公開会社における「行使条件違反」が直ちに発行無効事由(828条1項2号)になり得ることを示した。特に、取締役会の「お手盛り」による条件変更を厳格に制限しており、答案上は非公開会社の特質(既存株主の持株比率維持の重要性)と、条件の「重要性」をセットで論じる必要がある。
事件番号: 平成2(オ)391 / 裁判年月日: 平成6年7月14日 / 結論: 破棄自判
株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであり、かつ、右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し、右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも、有効である。
事件番号: 平成5(オ)317 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。
事件番号: 昭和46(オ)396 / 裁判年月日: 昭和46年7月16日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。