新株発行無効の訴えにおいて、商法二八〇条ノ一五第一項所定の出訴期間経過後に新たな無効事由を追加して主張することは、許されない。
新株発行無効の訴えにおいて出訴期間経過後に新たな無効事由を追加して主張することの許否
商法280条ノ15第1項
判旨
取締役会決議を欠く新株発行や著しく不公正な方法による新株発行は、原則として無効事由にあたらない。また、新株発行無効の訴えにおいて、出訴期間経過後に新たな無効事由を追加主張することは許されない。
問題の所在(論点)
1. 取締役会決議の欠缺や著しく不公正な発行方法が、新株発行の無効事由となるか。2. 新株発行無効の訴えにおいて、出訴期間経過後に新たな無効事由を主張(追加)することができるか。
規範
1. 新株発行が代表権限を有する取締役によってなされた以上、有効な取締役会決議を欠く場合や、著しく不公正な方法により行われた場合であっても、当該新株発行は無効とはならない。これは発行株が引受人の手元に留まっている場合も同様である。2. 新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号)において、出訴期間経過後に新たな無効事由を追加主張することは、法的関係の早期確定という同期間制限の趣旨を没却するため、許されない。
重要事実
上告人は、本件新株発行について、①有効な取締役会決議を経ていないこと、②著しく不公正な方法によるものであることを理由に無効を主張した。さらに、商法280条ノ15第1項(現行会社法828条1項2号)が定める出訴期間(当時は6ヶ月)を経過した後に、新たな無効事由を追加して主張しようとした。原審は、これらの事由は無効事由にあたらないとし、また期間後の事由追加も認めなかったため、上告人が最高裁に上告した。
事件番号: 平成2(オ)391 / 裁判年月日: 平成6年7月14日 / 結論: 破棄自判
株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであり、かつ、右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し、右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも、有効である。
あてはめ
1. 本件新株発行は代表権限ある取締役により行われており、取引の安全を重視する観点から、内部的意思決定の瑕疵や発行態様の不公正さは、発行自体の効力を否定するほどの重大な法的瑕疵とはいえない。2. 新株発行は多数の利害関係人に影響を及ぼすため、出訴期間を設けて早期に効力を確定させる必要がある。期間経過後の事由追加を認めると、法的安定性を著しく害し、期間制限を設けた規定の趣旨を損なうこととなる。
結論
本件上告を棄却する。取締役会決議の欠缺等は無効事由に該当せず、また出訴期間経過後の無効事由の追加主張は認められない。
実務上の射程
新株発行無効事由の限定性と、出訴期間の厳格性を再確認する判例である。答案上では、特に「不公正発行」が差止事由(会社法210条)にとどまり、無効事由にはならないことを論証する際の根拠となる。また、出訴期間後の主張制限は、形成の訴えにおける「攻撃防御方法の提出時期」を制限する重要な手続法上の規範として用いる。
事件番号: 平成5(オ)317 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。
事件番号: 昭和46(オ)396 / 裁判年月日: 昭和46年7月16日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。
事件番号: 昭和29(オ)797 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役会の招集手続を省略するためには、全取締役(および監査役)の同意が必要であるが、その事実が認められない場合には、招集手続を欠いた取締役会決議は原則として無効となる。本判決は、招集手続省略の同意があったとの主張に対し、事実認定の観点からこれを否定した原審の判断を維持したものである。 第1 事案の…