判旨
取締役会の招集手続を省略するためには、全取締役(および監査役)の同意が必要であるが、その事実が認められない場合には、招集手続を欠いた取締役会決議は原則として無効となる。本判決は、招集手続省略の同意があったとの主張に対し、事実認定の観点からこれを否定した原審の判断を維持したものである。
問題の所在(論点)
取締役会招集手続省略の同意の存否、およびその同意が認められない場合の招集手続の適法性(会社法旧368条、現368条2項に関連する問題)。
規範
取締役会の招集手続は、取締役および監査役に対してあらかじめ通知を行うことによって開始される。もっとも、全取締役(および監査役)の同意がある場合には、招集手続を省略して取締役会を開催することができる(会社法368条2項参照)。この同意を欠く招集手続の瑕疵は、特段の事情がない限り、取締役会決議を無効とする事由となり得る。
重要事実
上告人は、本件取締役会に先立ち、取締役会招集手続を省略することについての事前同意があったと主張した。しかし、第一審および原審(二審)は、提出された証拠や記録上の経過に照らし、そのような同意があったという事実を認めることはできないと判断した。
あてはめ
上告人は、事前に招集手続省略の同意があったから招集手続を経る必要はなかったと主張するが、判決によれば、原審が引用する第一審判決においてそのような同意の事実は認められないと既に判断されている。本件の記録上の経過や諸関係を検討しても、原審の事実認定や続行申請の却下に違法な点は認められない。したがって、同意があることを前提とする上告人の主張は、その前提となる事実を欠くため採用できない。
結論
招集手続省略の同意があったとは認められない以上、招集手続を欠いたことの違法を否定することはできず、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和27(オ)797 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 破棄差戻
資本金二五万円(一株の金額五〇円株式総数五〇〇〇株)の株式会社の増資による増加資本の額が金七五万円(一株の金額五〇円株式数一五〇〇〇株)である場合において、新株式五九五〇株の引受の欠缺があつても、特別の事情のない限り右引受の欠缺は取締約の引受払込の責任により補充せられるものと見るべきであつて、直ちに資本増加の無効を来す…
実務上の射程
取締役会決議の効力を争う場面において、招集手続省略(会社法368条2項)の適法性が論点となる際の基礎的な判例である。実務上・答案上は、まず全員の同意の有無を認定し、同意がない場合には、招集を受けなかった取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないといえるような「特段の事情」がない限り、原則として決議が無効になるという枠組みの中で、事実認定の重要性を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和40年10月8日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、新株引受権を株主以外の者に付与することについての株主総会の特別決議を経ることなく右株主以外の者に引受権を付与して発行されたものであつても、その瑕疵は新株発行無効の原因とならない。
事件番号: 平成2(オ)391 / 裁判年月日: 平成6年7月14日 / 結論: 破棄自判
株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであり、かつ、右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し、右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも、有効である。