第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合には,控訴審は,当該建物の明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や同請求に対する抗弁において主張されている敷金返還請求権の存否についても,当該明渡しの事実を考慮することなく,判断すべきである。
第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合における当該建物の明渡請求と併合されている他の請求の当否等についての控訴審の判断
民訴法136条,民訴法259条,民訴法260条,民事執行法22条2号
判旨
仮執行宣言付判決に基づく強制執行による給付の事実は、控訴審における請求の当否や抗弁の判断において考慮すべきではない。
問題の所在(論点)
仮執行宣言付判決に基づく強制執行によって給付がなされた事実が、控訴審における請求の当否(建物明渡や賃料相当損害金の存否)および抗弁(敷金返還請求権等)の判断に影響を及ぼすか。
規範
仮執行宣言付きの第1審判決に対して控訴があった場合、控訴審は、当該仮執行宣言に基づく強制執行によって給付がされた事実を考慮することなく、請求の当否を判断すべきである。この理は、主文にかかる給付請求のみならず、併合されている金銭請求の当否や、抗弁として主張される敷金返還請求権等の存否を判断する場合においても同様に適用される。
重要事実
建物の明渡請求および賃料相当損害金の支払請求を認容する仮執行宣言付第1審判決に対し、被告(上告人)が控訴した。この間、第1審判決の仮執行宣言に基づき建物の明渡しが強制執行により完了していた。被告側は、この執行による給付の事実を控訴審の判断において考慮すべきである旨を主張した。
事件番号: 昭和35(オ)629 / 裁判年月日: 昭和36年2月9日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付の第一審判決に対して控訴があつたときは、その執行によつて弁済を受けた事実を考慮することなく、請求の当否を判断すべきである。
あてはめ
仮執行宣言に基づく給付による実体法上の効果は、仮執行宣言が効力を失わないことを条件とする暫定的なものにすぎない。また、当該給付の事実は確定判決に基づく強制執行手続において考慮されるべき事柄である。したがって、控訴審が給付の事実を考慮せずに第1審判決の当否を判断したとしても、給付をした者の権利を不当に害することにはならない。本件においても、建物明渡しや敷金返還請求権の存否の判断に際し、執行済みの事実は考慮されない。
結論
控訴審は、強制執行による給付の事実を考慮せずに請求の当否を判断すべきであり、原審の判断は正当である。
実務上の射程
民事訴訟法上の仮執行制度の性質(暫定性)を確認する重要判例。答案では「口頭弁論終結時までの債務消滅」を主張する抗弁に対し、それが仮執行によるものである場合は、本判例を引用して「考慮すべきではない」と排斥する形で使用する。
事件番号: 昭和51(オ)937 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 棄却
いわゆる満足的仮処分の執行後に被保全権利の目的物の滅失等被保全権利に関して生じた事実状態の変動は、仮処分債権者においてその事実状態の変動を生じさせることが仮処分の必要性を根拠づけるものであり、実際上も仮処分執行に引き続いて右事実状態の変動を生じさせたため、その変動が実質において当該仮処分執行の一部をなすとみられるなどの…