仮執行宣言付の第一審判決に対して控訴があつたときは、その執行によつて弁済を受けた事実を考慮することなく、請求の当否を判断すべきである。
第一審判決の仮執行宣言にもとづいて強制執行がなされた場合と控訴審の本案判決。
民訴法497条,民訴法198条
判旨
第一審判決の仮執行宣言に基づき行われた支払は、判決の確定を待たずに強制執行を避けるための暫定的な給付にすぎないため、控訴審において本訴請求の存否を判断する際に考慮すべき債務消滅事由には当たらない。
問題の所在(論点)
第一審判決の仮執行宣言に基づき行われた支払が、控訴審において本訴請求に係る債務の消滅事由として考慮されるべきか。
規範
第一審判決に付された仮執行宣言に基づく支払は、債務者が執行を免れるために一時的に行う暫定的な性質を有する。したがって、このような支払は本案の不服申立手続(控訴審等)における債務消滅の基礎となる事由として考慮すべきではない。
重要事実
上告人は、第一審判決に基づき強制執行を受けることを避けるため、仮執行宣言に従って一定の金員を支払った(乙一号証による支払)。その後、控訴審において当該支払によって債務が消滅したと主張したが、原控訴審はこれを考慮せずに本訴請求の存否を判断し、上告を棄却したため、上告人が最高裁に上告した。
事件番号: 昭和31(オ)916 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
仮処分の執行により仮の履行状態が作り出されたとしても、裁判所はかかる事実を斟酌しないで本案の請求の当否を判断すべきである。
あてはめ
本件における乙一号証による支払は、第一審判決の仮執行宣言によって強制的に実施された(あるいはそれを免れるために行われた)ものである。このような支払は、確定判決に基づく完済とは異なり、仮執行の効力に依存した暫定的な状態にすぎない。ゆえに、控訴審が本訴の請求権自体の存否を審理・判断するにあたり、この事実を債務消滅事由として参酌しなかったことは正当であると解される。
結論
仮執行宣言に基づく支払は暫定的な給付であるため、控訴審において請求の存否を判断する際の債務消滅事由として考慮すべきではない。
実務上の射程
実務上、仮執行宣言に基づく弁済があった場合でも、控訴審判決では当該弁済を無視して第一審判決を維持(または変更)することになる。弁済の事実は、判決が確定した後の執行段階(清算手続)や、仮執行宣言付判決が取り消された場合の不当利得返還(民訴法260条2項)の問題として処理されるべきであることを示唆するものである。
事件番号: 昭和31(オ)358 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。 第1 事案の概要:上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡…
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…