判旨
控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。
問題の所在(論点)
控訴審で訴えの取下げがあった場合に、第一審判決の効力がどのようになり、裁判所はいかなる判決を下すべきか(旧民事訴訟法236条、現行民事訴訟法261条・262条の解釈)。
規範
控訴審において訴えの一部または全部が適法に、あるいは相手方の同意(黙示の同意を含む)を得て取り下げられた場合、その取下げの範囲において第一審判決は当然に失効する。この場合、控訴審裁判所は取下げられた部分について判決をする必要はなく、残余の部分について第一審判決を変更すべき理由がないと判断したときは、控訴棄却の判決をなすべきである。
重要事実
上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡請求の一部(特定の敷地部分以外)が適法に取り下げられた。上告会社はこれらの取下げに対し異議を述べた形跡がなく、取下げに同意したものと認められた。第一審判決のうち、取下げが行われた範囲についても失効していないとして上告がなされた。
あてはめ
本件において、原審でなされた金員支払請求および土地明渡請求の一部の取下げは、適法に行われたものである。また、相手方である上告会社はこれに対し異議を述べていないため、訴えの取下げに対する同意があったと解される。したがって、これら取下げに係る部分については、民事訴訟法上の規定に従い第一審判決は当然に失効したといえる。その結果、控訴審は残余の土地明渡請求(甲部分)についてのみ審理すれば足り、第一審判決を変更する理由がないと判断した以上、控訴を棄却した判断は正当である。
結論
控訴審での適法な訴えの取下げにより、当該部分の一審判決は当然に失効するため、控訴審が残余の部分についてのみ控訴を棄却した判断に誤りはない。
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
実務上の射程
訴えの取下げによる一審判決の失効(現行法262条1項、261条)を再確認する判断枠組み。実務上、控訴審で請求が減縮された場合に、裁判所が主文でどのように対応すべきかを示す基礎的な判例である。答案上は、訴訟終了事由の有無や既判力の範囲を論じる際、取下げによる遡及的消滅の帰結として言及し得る。
事件番号: 昭和31(オ)258 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間内に「本旨に従う履行の提供」がなされない限り、解除権の発生を妨げることはできず、期間経過後の履行提供は解除の効力を左右しない。また、特段の事情がない限り、有効な催告に基づく解除権の行使は権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は債務の履行を怠り、被上告人から相当期間を定めた催告…
事件番号: 昭和28(オ)393 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時罹災土地物件令に基づく賃借権者が、後に同一土地について一時使用の賃貸借契約を締結した場合、特段の事情がない限り、先行する物件令上の賃借権を放棄したものと認められる。 第1 事案の概要:上告人(関)は、戦時罹災土地物件令(物件令)4条1項に基づき、本件土地の一部について賃借権を取得していた。しか…
事件番号: 昭和31(オ)743 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の競落人が敷地の賃借権を承継したと主張しても、競落時点で既に賃貸借契約が解除により消滅していた場合には、承継の余地はなく、建物収去土地明渡しを免れない。また、賃貸人が譲渡を承諾しないことが権利の濫用にあたるという主張は、賃借権の譲渡の事実自体が認められない場合には、その前提を欠く。 第1 事案…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…