建物の賃借権の譲渡を受けて現にこれを占有している者がある場合でも、判示のように、右賃借権が抵当不動産の担保価値を保全する目的をもつて抵当債務の不履行を停止条件として設定されたものであつて、任意に引渡がなされたものと認めるに足りない事情があるときは、右の者において賃借権の取得を第三者に対抗することはできない。
建物賃借権の譲受を第三者に対抗しえないとされた事例
借家法1条
判旨
担保目的で設定された建物賃借権の仮登記のみでは、破産債権者に対し賃借権を対抗できず、また、建物の引渡しが賃貸人の意思に基づかない場合は対抗要件(借家法1条)を具備したといえない。
問題の所在(論点)
1. 建物賃借権設定の仮登記のみで、破産債権者等の第三者に対抗できるか。2. 賃貸人の意思に基づかない占有の取得が、借家法上の対抗要件たる「引渡し」として認められるか。
規範
建物賃借権を破産債権者等の第三者に対抗するためには、借家法1条(現行借地借家法31条1項)に基づく建物の引渡し、または適法な登記を備える必要がある。担保価値保存を目的とする賃貸借契約において、仮登記のみでは対抗力を有さず、また、賃貸人の意思に基づかない占有開始は、対抗要件たる「引渡し」には当たらない。
重要事実
破産者D社は、E物産からの借入金債務を担保するため、本件建物に根抵当権を設定するとともに、債務不履行を停止条件とする賃貸借契約を締結し、仮登記を経由した。D社の倒産により条件が成就したとして、E物産は賃借権を取得し、被上告人(譲受人)が対価を支払って譲渡を受け占有を開始した。その後D社に破産宣告がなされ、破産管財人(上告人)が建物明渡しを求めたが、被上告人は適法な賃借権を主張して争った。
あてはめ
本件では、賃借権設定の仮登記はなされているが、本登記や付記登記はなされておらず、仮登記のみで破産債権者に対抗することはできない。また、本件賃借権は担保価値保存を目的とし、当然に占有使用を予定したものではないため、現在の占有事実から適法な占有取得は推定されない。破産者の意思に基づかず占有が開始された疑いがある以上、任意に建物が引き渡された事実が認められない限り、借家法1条の対抗要件を具備したとはいえない。さらに、仮登記等の行為が破産法上の否認権(詐害行為否認等)の対象となる可能性も検討されるべきである。
結論
被上告人が破産債権者に対し賃借権を対抗しうる根拠が不十分であり、原審の判断には審理不尽・理由不備の違法がある。破産管財人の明渡請求を棄却した原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
担保目的の賃借権(いわゆる抵当権の実行を潜脱するような形式)の対抗力について、単なる仮登記や実態のない占有を否定する。答案上は、賃借権の対抗要件(引渡し)の具備が「賃貸人の意思に基づくこと」を要する点、及び破産手続における否認権行使の対象となりうる点に注目して引用すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1118 / 裁判年月日: 昭和43年2月16日 / 結論: 棄却
抵当権の設定契約が無効であるときは、右抵当権が実行され、当該不動産が競落されても、競落人は、右不動産の所有権を取得することができない。