不動産につき贈与を原因とする所有権移転仮登記が経由されているにとどまるときは、これにより仮登記権利者の所有権取得又は仮登記の当事者間における贈与契約の成立を推定することはできない。
仮登記の推定力
不動産登記法2条1号,民訴法185条
判旨
不動産につき贈与を原因とする所有権移転仮登記がなされているにとどまる場合、仮登記の存在のみによって所有権の取得や贈与の事実を推定することはできない。
問題の所在(論点)
不動産につき贈与を原因とする所有権移転仮登記がなされている場合、その仮登記の存在によって、権利取得の事実や贈与の事実が推定されるか(仮登記の権利推定力の有無)。
規範
不動産登記の登記原因(贈与等)に基づく権利取得の事実について、本登記には権利推定力が認められるが、仮登記は将来の本登記の順位を保全する予備的登記にすぎない。したがって、仮登記の存在のみをもって、仮登記権利者が当該不動産の権利を取得した事実や、その登記原因となった法律事実(贈与等)の存在を推定することはできない。
重要事実
上告人は、不動産について贈与を原因とする所有権移転仮登記を有していた。上告人は、この仮登記の存在を根拠に、当該不動産の所有権取得または贈与の事実が推定されるべきであると主張して争った。なお、本件には建物賃貸借契約の解約申入れに関する正当事由の有無も関連しているが、仮登記の推定力の有無が主要な法理的争点となった。
あてはめ
本件において、上告人の有する登記は「所有権移転仮登記」にとどまるものである。仮登記は本登記と異なり、対抗力を有せず、実体法上の権利関係を公示する機能も限定的である。そのため、贈与という登記原因が記載されていたとしても、その記載のみから直ちに実体的な贈与の合意や所有権の移転があったと推認することは論理の飛躍がある。したがって、仮登記の存在を理由に贈与の事実を事実上あるいは法律上推定することは認められない。
結論
不動産の所有権移転仮登記には、所有権取得や贈与の事実を推定する力は認められない。したがって、上告人の主張は採用されず、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、本登記には認められる「権利推定力」が仮登記には認められないことを明確にした。司法試験においては、民法177条や不動産登記法の文脈で、仮登記の効力(順位保全的効力)と本登記の効力の違いを論じる際の基礎知識として重要である。立証責任の分配において、仮登記権利者は仮登記があることのみをもって有利な扱いを受けられないという実務上の帰結を導く際に使用する。
事件番号: 昭和34(オ)548 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の贈与を受けたが登記を経ていない者は、その後に贈与者の相続人から当該不動産を譲り受け所有権移転登記を経た第三者に対し、その所有権の取得を対抗することができない。 第1 事案の概要:本件家屋の所有者Dは、生前に当該家屋を上告人に贈与したが、当時は未登記であり、贈与に伴う所有権移転登記も行われな…
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和36(オ)1219 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
権利取得が仮処分登記前であつても、権利取得登記が仮処分登記後になされたときは、権利取得者は、右権利取得を以て仮処分債権者に対抗し得ない。