基本給を月額41万円とした上で月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い,140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する旨の約定のある雇用契約の下において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,労働者が時間外労働をした月につき,使用者は,労働者に対し,月間総労働時間が180時間を超える月の労働時間のうち180時間を超えない部分における時間外労働及び月間総労働時間が180時間を超えない月の労働時間における時間外労働についても,上記の基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項の規定する割増賃金を支払う義務を負う。 (1) 上記の各時間外労働がされても,上記の基本給自体が増額されるものではない。 (2) 上記の基本給の一部が他の部分と区別されて同項の規定する時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれない上,上記の割増賃金の対象となる1か月の時間外労働の時間数は各月の勤務すべき日数の相違等により相当大きく変動し得るものであり,上記の基本給について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と上記の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。 (補足意見がある。)
基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約の下において,使用者が,各月の上記一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても,基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項の規定する割増賃金の支払義務を負うとされた事例
労働基準法32条,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項
判旨
労働基準法37条の割増賃金が基本給に含まれると認められるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要である。また、賃金債権の放棄が有効とされるためには、労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない。
問題の所在(論点)
基本給の支払が労働基準法37条1項の割増賃金の支払として認められるための要件(判別可能性)、および労働者による賃金債権放棄の有効要件。
規範
1. 労働基準法37条1項の割増賃金が支払われたというためには、基本給等の支払において、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、同項の割増賃金に当たる部分とを判別できることを要する。 2. 労働者による賃金債権の放棄が認められるためには、その旨の意思表示があり、かつそれが労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない。
事件番号: 平成21(受)440 / 裁判年月日: 平成21年12月18日 / 結論: 破棄差戻
労働基準法41条2号所定のいわゆる管理監督者に該当する労働者は,同法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができる。
重要事実
人材派遣会社に雇用されたX(上告人)は、基本給月額41万円、月間総労働時間が180時間を超えた場合は別途支給し、140時間に満たない場合は控除する旨の約定(本件雇用契約)の下で派遣労働に従事した。Xは、月間180時間以内の範囲で行った時間外労働に対する割増賃金の支払を求めたが、Y(被上告人)は、基本給に当該時間外手当が含まれている、あるいはXが請求権を放棄したと主張した。原審は、高額な基本給設定の合理性や代償措置を理由に、基本給には実質的に時間外手当が含まれ、Xは自由意思により請求権を放棄したと判断した。
あてはめ
1. 本件契約では月額41万円の全体が基本給とされ、その一部が時間外割増賃金として区別されていない。また、1ヶ月の時間外労働時間は変動し得るものであり、41万円のうち通常の賃金部分と割増賃金部分を判別することは不可能である。したがって、基本給の支払をもって割増賃金が支払われたとはいえない。 2. Xが時間外手当請求権を放棄する旨の意思表示をした事実は認められず、時間外労働時間の予測が困難な状況下では、自由な意思に基づく放棄があったとはいえない。
結論
被上告人は、月間180時間以内の時間外労働についても、基本給とは別に労働基準法37条1項の割増賃金を支払う義務を負う。原判決の棄却部分は破棄を免れない。
実務上の射程
いわゆる「固定残業代制」や「込み込み残業代」の有効性を判断する際のリーディングケースである。「通常の賃金部分と割増賃金部分の判別可能性」は、就業規則や契約書の文言だけでなく、実際の運用実態を含めて厳格に判断される。答案上、基本給に手当が含まれる旨の主張に対しては、まず本判例の判別可能性の枠組みを提示し、算定根拠の有無や金額の明示性を検討すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)19 / 裁判年月日: 昭和36年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建築請負契約において、建築資材の購入や「きざみ込み」等の準備行為をしただけでは、特段の事情がない限り、債務の本旨に従った履行の提供があったとは認められない。 第1 事案の概要:建築請負契約の請負人(上告人)が、建築のために16万円相当の建築資材を買い入れ、その切り込み(きざみ込み)を行い、大工手間…