労働基準法41条2号所定のいわゆる管理監督者に該当する労働者は,同法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができる。
いわゆる管理監督者に該当する労働者が深夜割増賃金を請求することの可否
労働基準法37条1項,労働基準法37条3項,労働基準法41条
判旨
労働基準法41条2号の管理監督者であっても、同法37条3項の深夜割増賃金に関する規定の適用は除外されず、深夜割増賃金請求権を有する。ただし、所定賃金に深夜割増賃金を含める趣旨が明らかな場合には、その額の限度で支払を認める必要はない。
問題の所在(論点)
労働基準法41条2号の「管理監督者」に対し、同法37条3項の深夜割増賃金に関する規定が適用されるか。また、高額な賃金や手当の支払をもって深夜割増賃金の支払に代えることができるか。
規範
労働基準法41条にいう「労働時間、休憩及び休日に関する規定」に深夜業の規制(同法37条3項等)は含まれない。深夜割増賃金は、労働時間帯そのものに着目して労働者に精神的・肉体的負担を強いることへの代償であり、労働時間の長さを規制する他の規定とは趣旨目的を異にするため、管理監督者にも適用される。ただし、労働協約や就業規則等により、所定賃金に一定額の深夜割増賃金を含める趣旨が「明らか」である場合には、その額の範囲内で支払義務は消滅する。
重要事実
美容室等を経営する被上告人に雇用されていた上告人(店長、管理監督者)が、労働基準法37条3項に基づき深夜割増賃金の支払を求めた事案。上告人の給与は月額約39万〜43万円に加え、店長手当3万円が支給されており、他の店長の1.5倍程度の水準であった。原審は、上告人が管理監督者に該当することを理由に、深夜割増賃金の請求を否定した。
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あてはめ
まず、労働基準法41条の除外対象には深夜業に関する規定が含まれていないと解すべきであり、管理監督者という地位のみを理由に深夜割増賃金請求権を否定することはできない。次に、本件の上告人の賃金水準は他と比較して高額であるが、その賃金や店長手当の中に、深夜割増賃金に相当する額が「含める趣旨」で支払われていたかが不明確である。単に賃金総額が高いという事実だけでは足りず、算定方法や趣旨を精査して深夜割増賃金の支払としての実態を備えているかを審理する必要がある。
結論
管理監督者であっても深夜割増賃金請求権は認められる。本件では、既払いの賃金が深夜割増賃金を含める趣旨であったか等の審理を尽くさせるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
管理監督者に関する論点が出題された際、休日・時間外手当と「深夜手当」を峻別して論じるために必須の判例である。答案上は、まず41条2号の管理監督者該当性を検討し、該当する場合であっても深夜手当は別個に請求可能である旨を本判例の論理を用いて記述する。その際、賃金に「込み」とする主張に対しては、判例が示す「含める趣旨が明らかか」という規範で当てはめる必要がある。
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