被用者と第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。
被用者と第三者との共同不法行為による損害を賠償した第三者からの使用者に対する求償権の成否
民法442条,民法715条,民法719条
判旨
被用者と第三者の共同不法行為により生じた損害につき、自己の負担部分を超えて賠償した第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。使用者は報償責任の趣旨に基づき、共同不法行為の枠組みにおいても被用者と一体として責任を負うべきだからである。
問題の所在(論点)
被用者と第三者の共同不法行為において、被害者に損害を賠償した第三者が、直接の過失のない使用者(民法715条1項)に対して求償権を行使することの可否。
規範
民法715条1項の規定は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることに着目し、利益の存するところに損失をも帰せしめるという報償責任の原理に基づくものである。したがって、被用者が事業の執行につき第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合、使用者と被用者は一体をなすものとみるべきであり、使用者は第三者との関係においても被用者と同じ内容の責任を負う。その結果、自己の負担部分を超えて賠償した第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償権を行使し得る。
重要事実
タクシー運転手D(被上告人の被用者)と自家用車を運転する上告人が交差点で衝突し、後続車等に損害を与える共同不法行為が発生した。過失割合は上告人2割、D8割と認定された。上告人は被害者らに対し、損害合計30万1820円の全額を賠償した。その後、上告人はDの使用者である被上告人に対し、Dの過失割合に相当する8割分(24万1456円)の求償を求めて提訴した。
事件番号: 昭和56(オ)273 / 裁判年月日: 昭和56年11月27日 / 結論: 棄却
兄が、その出先から自宅に連絡して弟に兄所有の自動車で迎えに来させたうえ、弟に右自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に帰る途中で交通事故が発生した場合において、兄が右同乗中助手席で運転上の指示をしていた等判示の事情があるときは、兄と弟との間には右事故当時兄を自動車により自宅に送り届けるという仕事につき、民法七一五条…
あてはめ
本件事故は上告人の過失2割、Dの過失8割による共同不法行為である。上告人は被害者に全額を賠償したが、これは自己の負担部分である6万0364円(2割相当)を超えている。報償責任の趣旨から、使用者である被上告人は被用者Dと一体となって責任を負うべき立場にあるため、第三者である上告人は、Dの負担部分である24万1456円(8割相当)につき、被上告人に対して求償できるといえる。
結論
上告人は被上告人に対し、自己の負担部分を超える24万1456円及び遅延損害金の求償を請求できる。
実務上の射程
共同不法行為における使用者責任の性質を「一体的責任」と定義した点に意義がある。答案上は、求償関係において使用者を「過失零」の別個体として扱うのではなく、被用者の過失割合をそのまま使用者の責任範囲として構成する根拠として用いる。
事件番号: 平成30(受)1429 / 裁判年月日: 令和2年2月28日 / 結論: 破棄差戻
被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額につ…
事件番号: 平成7(オ)160 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: その他
甲と乙とが乗車中の自動二輪車の交通事故により死亡した甲の相続人が,捜査機関が甲を運転者と認定したことを知りながら,乙を運転者と主張して乙に対して損害賠償請求訴訟を提起した場合であっても,右主張に沿う事故直前の目撃者らの供述があり,現場の状況,自動二輪車の損傷状況などの客観的証拠からは運転者を特定することが必ずしも容易で…
事件番号: 平成21(受)1539 / 裁判年月日: 平成22年7月9日 / 結論: 破棄差戻
本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について,本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら,本訴原告において記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情について認定説示することなく,本訴の提起が不法行為に当たることを否定した原審の判断には,違法があ…