化粧品会社の出張所名義の販売契約を委託販売店契約と認定した事例
判旨
化粧品販売の委託契約に基づき、出張所長の名義使用を許諾された店主であっても、契約の実体が独立の商人間の委託販売店契約であるならば、当該店主は労働基準法上の労働者ではなく独立の商人であると解される。
問題の所在(論点)
委託販売店契約に基づき「出張所長」の名称を使用し、会社の販売組織に組み込まれているように見える店主が、労働基準法上の労働者に該当するか、あるいは独立の商人に該当するか。
規範
契約の法的性質および当事者の地位は、形式的な名称や肩書きにとらわれず、契約の締結に至る経緯、業務執行の実態、報酬の性質、指揮監督関係の有無等の諸般の事情を総合考慮し、実体的に判断されるべきである。特に独立の商人としての裁量が認められ、自己の危険と計算において事業を営む実態がある場合には、労働者性は否定される。
重要事実
化粧品製造販売業を営む被上告人会社は、セールスマン販売方式を採用し、全国の委託契約店に販売を委託していた。被上告人は、販売政策上の理由から委託契約店の店主を「出張所長」に選任し、出張所名義の使用を許諾していた。上告人A1は、同様の約定で委託販売店契約を結び、名古屋市の出張所長に選任された。上告人A2およびA3は、A1が被上告人に対して負う債務について連帯保証をした。後日、当該契約の法的性質(労働契約か独立の商人間の契約か)が争点となった。
あてはめ
本件において、被上告人会社と上告人A1との間に締結された契約は、一般の委託販売店契約の例に倣ったものであった。出張所長という名称の使用はあくまで販売政策上の便宜によるものであり、その実体は独立の商人としての活動を前提としている。原審が認定した事実関係によれば、A1は自己の責任において販売業務を行う独立の商人としての地位を有しており、会社との間に指揮監督下での労働を前提とする使用従属関係は認められない。したがって、本件契約の実体は独立の商人たる上告人と被上告人会社間の委託販売店契約であると評価される。
結論
本件契約の実体は独立の商人間の委託販売店契約であり、上告人A1は労働者には該当しない。したがって、連帯保証債務の存否を含め、契約を有効とした原判決に違法はない。
実務上の射程
本判決は、外形的に「出張所長」といった組織内の役職名が与えられていても、業務の実態が独立の商人による委託販売であれば労働者性を否定する実務上の指針を示す。労働者性の判断において「形式よりも実態」を重視する判断枠組みは、現代のフランチャイズ契約や業務委託契約の労働者性判断においても通底する基本原則である。
事件番号: 昭和28(オ)503 / 裁判年月日: 昭和30年7月15日 / 結論: 棄却
庶務課長の命を受けて同課長と共に所管事項につき支店長を補佐する事実上の行為をする権限を有するにすぎない会社支店の庶務係長は、商法第四二条にいう「営業ノ主任者タルコトヲ示スヘキ名称ヲ附シタル使用人」にはあたらない。
事件番号: 昭和32(オ)831 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】売買の委託等の商取引において契約当事者が誰であるかは、商談の経緯、帳簿の記載、仕切書の宛名、事前の連絡状況等の諸般の事情を総合して判断すべきである。形式的な書面の記載のみならず、取引の実態や当事者の合理的な行動原理に照らして真実の委託者を確定する必要がある。 第1 事案の概要:被上告人(組合)は、…