旅客鉄道事業等を営む会社である使用者が,運転士の経験のない者に対する運転士発令につき車掌職の経験をほぼ必要不可欠な条件とする運用を始めるに当たり,既に運転士の資格を有しているが運転士への発令を留保され車掌職の経験もない未発令の労働者のうち,希望者の中から選考した者に対し車掌となるための教育を行うこととした場合において,A労働組合所属の希望者11名からは3名を除いて上記教育の対象者に選ばず運転士に発令しなかったこと及びその後は上記教育を行わずA労働組合所属の上記の未発令者からは1名を除いて運転士に発令しなかったことは,同じ選考手続においてB労働組合所属の希望者9名の全員が上記教育の対象者として選ばれており,A労働組合がストライキを含む反対闘争を行っている中で使用者の幹部が反対派の労働組合への敵対的な姿勢を示す発言をしていたとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い又は同条3号の支配介入に当たらない。 (1) 運転士への発令は昇進として位置付けられており,上記教育を希望したA労働組合所属の上記の未発令者11名の中でその対象者に選ばれなかった8名の能力や勤務成績等が,これに選ばれたB労働組合所属者と比較して劣るものでなかったという事情はうかがわれず,また,過去に運転士を経験していたA労働組合所属者23名が上記選考とほぼ同じ時期に運転士に発令されていた。 (2) 上記教育は当時の運転士の需給状況等を踏まえて実施されたものであり,それが行われなくなった後,上記教育を受けなかった上記の未発令者が原則として運転士に発令されなくなったことはA労働組合所属者と他の労働組合所属者との間で異なるものではなく,また,上記教育の対象者に選ばれなかったA労働組合所属者を対象として改めて同様の教育の機会を特に設けるべき需給状況の変化等の事情が生じていたともうかがわれない。
旅客鉄道事業等を営む会社である使用者が労働者を運転士に発令しなかったことが,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い又は同条3号の支配介入に当たらないとされた事例
労働組合法7条1号,労働組合法7条3号
判旨
不当労働行為における不利益取扱いの成否につき、組合員間の選考結果に差異がある場合でも、昇進基準の合理性や個別の能力・勤務成績、労働力の需給状況等の諸事情に照らし、正当な人事処遇の範囲内であれば、所属労働組合を理由とする不利益取扱い及び支配介入には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 補完教育の選考において、所属組合によって合格率に顕著な差異が生じたことが、労組法7条1号の不利益取扱いに当たるか。 2. 補完教育の廃止により被上告人組合員が運転士登用から事実上排除されたことが、同条1号の不利益取扱い及び3号の支配介入に当たるか。
事件番号: 平成22(行ヒ)489 / 裁判年月日: 平成24年2月21日 / 結論: 破棄差戻
音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結し,顧客宅等を訪問して行う出張修理業務に従事する受託者につき,次の(1)〜(5)など判示の事情の下において,独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無について十分に審理を尽くすことなく,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらな…
規範
労働組合法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入の成否は、使用者が行った処遇の目的、経緯、及び態様を総合的に考慮して判断される。昇進・選考における差別が主張される場合、労働者側は、対象となった組合員の能力や勤務成績が、選考された他組合員と比較して劣るものでなかったことについて一応の立証を要する。また、特定の運用廃止が、組合員を排斥する目的で殊更になされたといえない場合には、不当労働行為は成立しない。
重要事実
JR東日本(参加人)は、国鉄から承継した運転士未発令者(本件未発令者)に対し、新設した昇進基準に基づき車掌経験を必須とする運用を開始した。平成元年の車掌登用(補完教育)選考において、A労組所属者は希望者9名全員が合格したのに対し、被上告人組合(反対派)の所属者は11名中3名のみの合格に留まった。また、平成2年以降、参加人は補完教育を廃止し、標準的な昇進経路による運転士発令へ移行したため、選考に漏れた被上告人組合員らは運転士に発令されなくなった。被上告人は、これらの一連の措置が所属組合を理由とする不当労働行為であるとして救済を求めた。
あてはめ
1. 補完教育は昇進過程の一部であり、選考に漏れた組合員の能力等が合格者と比較して劣っていなかった点について、被上告人側の一応の立証がない。また、被上告人組合員からも合格者が出ており、同時期に運転士経験のある同組合員が多数発令されている事実に照らせば、組合嫌悪による差別とは断定できない。 2. 平成2年以降の補完教育廃止は、運転士の需給状況や標準的な昇進経路の確立を踏まえた合理的な措置である。選考結果や希望状況に基づき、通常の運用に移行したに過ぎず、殊更に被上告人組合員を排除する目的があったとは認められない。参加人幹部の敵対的発言があっても、直ちに本件措置の不当性を基礎付けるものではない。
結論
参加人の一連の措置は、所属労働組合を理由とする不利益取扱い及び支配介入には当たらず、不当労働行為は成立しない。
実務上の射程
人選の合理性が認められる場面において、組合間の「合格率の差」や「経営陣の組合嫌悪発言」のみをもって直ちに不当労働行為を認定することを否定した。答案上は、不利益取扱いの動機・目的を判断する際、人事上の形式的な公平性だけでなく、具体的な能力比較や業務上の必要性(需給状況等)による正当化の余地を検討する素材として用いる。
事件番号: 平成13(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
1 日本国有鉄道改革法6条2項所定の旅客鉄道株式会社及び同法8条2項所定の日本貨物鉄道株式会社の設立委員ひいては上記各社は,その成立の時の職員の採用について,日本国有鉄道がその職員の中から上記各社の職員となるべき者を選定してその名簿を作成するに当たり専らその意思により組合差別をしたという場合には,労働組合法7条にいう使…
事件番号: 平成15(行ヒ)109 / 裁判年月日: 平成16年7月12日 / 結論: その他
労働組合の組合員は,使用者が労働組合法7条3号の不当労働行為を行ったことを理由とする救済申立てについて,申立て適格を有する。
事件番号: 平成15(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
労働組合の組合員に対する雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…