労働組合の組合員に対する雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらない。 (反対意見がある。)
労働組合の組合員に対する雇入れの拒否と労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い及び同条3号の支配介入
労働組合法7条1号,労働組合法7条3号
判旨
国鉄分割民営化における不採用に関し、法律上の採用手続が分離されている以上、国鉄による採用候補者名簿作成時の組合差別について承継法人は「使用者」としての責任を負わず、また、新規採用の拒否は特段の事情がない限り不当労働行為を構成しない。
問題の所在(論点)
1. 国鉄による採用候補者名簿作成時の不当労働行為について、承継法人が労組法7条の「使用者」として責任を負うか。 2. 新規の雇入れ(6月採用)における拒否が、労組法7条1号の不利益取扱いまたは3号の支配介入に該当するか。
規範
1. 労働組合法7条の「使用者」責任の所在について、採用手続の各段階の権限が法令上明確に分離されている場合、設立委員自身が不当労働行為を行った等の事情がない限り、前身組織(国鉄)の差別的行為の責任を承継法人(新会社)に帰せしめることはできない。 2. 雇入れの拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益取扱いにほかならないと評価できる等の特段の事情がない限り、同条1号の不利益取扱い及び3号の支配介入には当たらない。
重要事実
国鉄の分割民営化に際し、日本国有鉄道改革法に基づき承継法人が設立された。同法上の採用手続では、国鉄が採用候補者名簿を作成し、設立委員がこれに基づき採用を決定する仕組みであった。国鉄労働組合(組合員)らは、国鉄が名簿作成段階で組合員を差別的に除外したことが不当労働行為にあたるとして、承継法人であるJR各社(被上告人)に対し救済を求めた。また、設立後に行われた追加採用(6月採用)における不採用についても同様に争われた。
事件番号: 平成13(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
1 日本国有鉄道改革法6条2項所定の旅客鉄道株式会社及び同法8条2項所定の日本貨物鉄道株式会社の設立委員ひいては上記各社は,その成立の時の職員の採用について,日本国有鉄道がその職員の中から上記各社の職員となるべき者を選定してその名簿を作成するに当たり専らその意思により組合差別をしたという場合には,労働組合法7条にいう使…
あてはめ
1. 改革法23条は、国鉄と設立委員の権限を明確に分離しており、名簿に記載されない限り採用される余地のない仕組みを設けている。名簿作成の主体は国鉄であり、不採用となった職員の雇用主も国鉄(後に事業団)として存続する。したがって、設立委員自身が関与しない限り、国鉄の行為につき承継法人は「使用者」の責任を負わない。 2. 6月採用は、設立後の新会社が独自の基準で行った新規の雇入れである。企業には原則として採用の自由があり、雇入れ後の地位を奪う不利益取扱いとは性質を異にする。本件では、従前の雇用関係における不利益取扱いと同視できるような特段の事情も認められない。
結論
1. 承継法人は、国鉄が行った名簿作成時の差別について「使用者」としての責任を負わない。 2. 6月採用における採用拒否は、不当労働行為を構成しない。
実務上の射程
国鉄清算事業団事件として知られ、法人格が別個である場合の「使用者」概念の拡張を否定し、採用の自由を再確認した判例である。答案上は、組織再編等の場面で前身組織の不当労働行為責任が承継法人に及ぶか、あるいは新規採用拒否が不当労働行為になるかを論じる際の主要な準拠枠組みとして用いる。
事件番号: 平成15(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月22日
【結論(判旨の要点)】国鉄分割民営化における承継法人の採用に関し、不採用となった職員との間で承継法人が労組法上の「使用者」責任を負うのは、設立委員自らが不当労働行為を行った場合に限られる。また、新規の雇入れ拒否は、従前の雇用関係における不利益取扱いと評価できる等の特段の事情がない限り、不当労働行為には当たらない。 第1…
事件番号: 平成13(行ヒ)56 / 裁判年月日: 平成15年12月22日
【結論(判旨の要点)】国鉄分割民営化における承継法人(JR)の採用手続において、国鉄が採用候補者の選定に際し不当労働行為(組合差別)を行ったとしても、特段の事情がない限り、承継法人は労働組合法7条の「使用者」としての責任を負わない。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化に際し、日本国有鉄道改革法23条に基…
事件番号: 昭和55(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和61年1月24日 / 結論: 棄却
相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組…
事件番号: 平成16(行ヒ)50 / 裁判年月日: 平成18年12月8日 / 結論: 破棄差戻
1 労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には,使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも,当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる。 2 労使協調路線を採るA労働組合の組合員である新幹線運転所の指導科長(助…