判旨
国鉄分割民営化における承継法人の採用に関し、不採用となった職員との間で承継法人が労組法上の「使用者」責任を負うのは、設立委員自らが不当労働行為を行った場合に限られる。また、新規の雇入れ拒否は、従前の雇用関係における不利益取扱いと評価できる等の特段の事情がない限り、不当労働行為には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 国鉄による採用候補者名簿の作成段階での組合差別について、承継法人(JR各社)が労組法7条の「使用者」として責任を負うか。 2. 会社発足後の新規採用(6月採用)における雇入れ拒否が、労組法7条1号・3号の不当労働行為を構成するか。
規範
1. 法律により分離・規定された採用手続(日本国有鉄道改革法23条)において、採用候補者名簿の作成権限を専ら有する国鉄が組合差別を行った場合、原則としてその責任は国鉄(及び清算事業団)が負い、設立委員自らが不当労働行為を行った等の事情がない限り、承継法人は労組法上の「使用者」としての責任を負わない。 2. 雇入れの自由(憲法22条・29条)に鑑み、新規の雇入れ拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないと肯定できる等の「特段の事情」がない限り、労組法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入には当たらない。
重要事実
国鉄の分割民営化に際し、JR各社の設立委員が提示した「採用の基準」に基づき、国鉄が採用候補者名簿を作成した。全動労所属の組合員らは、不当な組合差別により名簿から除外されたとして、JR北海道等の承継法人を相手に救済を申し立てた。また、JR北海道発足後の追加採用(6月採用)においても、組合員が不採用とされたことが争点となった。
あてはめ
1. 改革法は国鉄と設立委員の権限を明確に分離しており、採用されなかった職員は国鉄・事業団との雇用関係が存続する。したがって、国鉄による名簿作成時の差別責任は専ら国鉄に帰属し、設立委員自身が具体的に関与したとはいえない本件では、承継法人は「使用者」に当たらない。 2. 6月採用は、JR北海道が設立後に独自の判断で行った新規採用である。労働者を雇い入れる際、いかなる者を雇用するかは企業者の自由であり、本件では雇入れ拒否が従前の雇用関係上の不利益取扱いと同視できるような「特段の事情」は認められない。
結論
承継法人は4月採用における「使用者」責任を負わず、また6月採用の拒否も特段の事情がないため不当労働行為には当たらない。上告棄却。
事件番号: 平成15(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
労働組合の組合員に対する雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらない。 (反対意見がある。)
実務上の射程
法人格が異なる主体間の不当労働行為責任の承継、および採用段階における雇入れの自由と労組法7条の適用限界を示す重要判例。答案では「使用者」の概念を拡張すべきか、あるいは「特段の事情」の有無を検討する際の規範として活用する。
事件番号: 平成13(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
1 日本国有鉄道改革法6条2項所定の旅客鉄道株式会社及び同法8条2項所定の日本貨物鉄道株式会社の設立委員ひいては上記各社は,その成立の時の職員の採用について,日本国有鉄道がその職員の中から上記各社の職員となるべき者を選定してその名簿を作成するに当たり専らその意思により組合差別をしたという場合には,労働組合法7条にいう使…
事件番号: 平成13(行ヒ)56 / 裁判年月日: 平成15年12月22日
【結論(判旨の要点)】国鉄分割民営化における承継法人(JR)の採用手続において、国鉄が採用候補者の選定に際し不当労働行為(組合差別)を行ったとしても、特段の事情がない限り、承継法人は労働組合法7条の「使用者」としての責任を負わない。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化に際し、日本国有鉄道改革法23条に基…
事件番号: 平成13(行ヒ)97 / 裁判年月日: 平成15年12月22日
【結論(判旨の要点)】本件は、最高裁判所が上告審として受理しない旨を決定したものであるため、実体法上または訴訟法上の具体的な判示事項は存在しない。 第1 事案の概要:申立人らが最高裁判所に対し、本件を上告審として受理するよう申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):本件が、最高裁判所により上告審として受理される…