判旨
国鉄分割民営化における承継法人(JR)の採用手続において、国鉄が採用候補者の選定に際し不当労働行為(組合差別)を行ったとしても、特段の事情がない限り、承継法人は労働組合法7条の「使用者」としての責任を負わない。
問題の所在(論点)
国鉄が行った採用候補者名簿の作成過程における組合差別について、雇用関係のない承継法人(JR各社)が労働組合法7条の「使用者」として責任を負うか。
規範
労働組合法7条の「使用者」とは、原則として雇用契約上の事業主を指す。法律により採用手続の各段階における権限が明格に分離・規定されている場合、設立委員自身が不当労働行為を行った等の特段の事情がない限り、他の主体(国鉄)が行った組合差別について、設立委員および承継法人が同条の責任を負うことはない。
重要事実
日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化に際し、日本国有鉄道改革法23条に基づき承継法人(JR各社)の職員採用が行われた。同条は、①設立委員が採用基準を提示し、②国鉄が基準に従い採用候補者名簿を作成し、③設立委員が名簿記載者から採用を決定する、という分担を定めていた。国鉄労働組合(国労)の組合員らが、国鉄による名簿作成段階で組合差別がなされ不採用となったのは不当労働行為に当たるとして救済を申し立て、労働委員会はJR各社に対し救済を命じた。JR各社はこれを不服として命令の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
改革法23条は、採用手続を段階化し、国鉄と設立委員の権限を明確に分離している。国鉄が採用候補者に選定しなかった職員は、国鉄(後の清算事業団)との雇用関係が存続し、同法上の手続によらない限り承継法人に採用される余地はない。したがって、名簿作成時の不利益取扱いの責任は雇用主である国鉄(事業団)が負うべきである。本件では、設立委員自身が不当労働行為を行ったとは認められない以上、各段階の権限を分離した改革法の趣旨に照らし、設立委員および承継法人を「使用者」と解することはできない。
結論
承継法人は「使用者」に当たらず、不当労働行為の責任を負わない。救済命令を取り消した原審の判断は妥当である。
事件番号: 平成13(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
1 日本国有鉄道改革法6条2項所定の旅客鉄道株式会社及び同法8条2項所定の日本貨物鉄道株式会社の設立委員ひいては上記各社は,その成立の時の職員の採用について,日本国有鉄道がその職員の中から上記各社の職員となるべき者を選定してその名簿を作成するに当たり専らその意思により組合差別をしたという場合には,労働組合法7条にいう使…
実務上の射程
法人格が別個であり、かつ法律上の採用権限が分断されている特殊な事案(国鉄改革)における判断であり、一般的な採用差別や営業譲渡等の事案にそのまま射程が及ぶものではない。答案上は、使用者概念の原則(雇用主責任)を維持しつつ、法定の権限分離がある場合の責任帰属を論じる際の参照判例となる。
事件番号: 平成15(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月22日
【結論(判旨の要点)】国鉄分割民営化における承継法人の採用に関し、不採用となった職員との間で承継法人が労組法上の「使用者」責任を負うのは、設立委員自らが不当労働行為を行った場合に限られる。また、新規の雇入れ拒否は、従前の雇用関係における不利益取扱いと評価できる等の特段の事情がない限り、不当労働行為には当たらない。 第1…
事件番号: 平成15(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月22日 / 結論: 棄却
労働組合の組合員に対する雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成16(行ヒ)50 / 裁判年月日: 平成18年12月8日 / 結論: 破棄差戻
1 労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には,使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも,当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる。 2 労使協調路線を採るA労働組合の組合員である新幹線運転所の指導科長(助…
事件番号: 平成22(行ヒ)52 / 裁判年月日: 平成24年2月23日 / 結論: 破棄自判
旅客鉄道事業等を営む会社である使用者が,運転士の経験のない者に対する運転士発令につき車掌職の経験をほぼ必要不可欠な条件とする運用を始めるに当たり,既に運転士の資格を有しているが運転士への発令を留保され車掌職の経験もない未発令の労働者のうち,希望者の中から選考した者に対し車掌となるための教育を行うこととした場合において,…