相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組合が結成されこれが公然化した後使用者が同組合を嫌悪しこれを差別する行動を繰り返しているなど判示の事実関係があるときは、右各組合結成直後の年度の賞与における人事考課率の査定は、甲組合員につきその組合所属を理由に、甲組合員全体の平均人事考課率と乙組合員ら全体の平均人事考課率の差に相応する率だけそれぞれ低く査定し、かつ、それにより甲組合の組織の弱体化を図つたものとして、労働組合法七条一号及び三号の不当労働行為に当たる。
賞与における人事考課率の査定が労働組合法七条一号及び三号の不当労働行為に当たるとされた事例
労働組合法7条1号,労働組合法7条3号
判旨
賞与の人事考課において組合所属を理由に一律に低く査定した行為は、労働組合法7条1号および3号の不当労働行為を構成する。この場合、労働委員会が不当労働行為がなければ得られたであろう人事考課率を算定し、既払額との差額支払を命じることは裁量の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
賞与の人事考課における組合員間の顕著な格差が、労働組合法7条1号の不利益取扱いおよび3号の支配介入に該当するか。また、労働委員会が具体的な加算率を示して差額支払を命じる救済命令が、裁量権の範囲内として認められるか。
規範
使用者が賞与の人事考課において、個々の組合員をその組合所属を理由として低く査定した事実は、不利益取扱い(労組法7条1号)および支配介入(同3号)の不当労働行為に該当する。また、労働委員会は、救済措置として、不当労働行為がなければ得られたであろう人事考課率を合理的な方法で算定し、これに基づく差額の支払を命じる広範な裁量権を有する。
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
重要事実
小売業を営む上告会社には、第二組合(F労組)と、後に結成された第一組合(参加人組合)が存在した。会社は参加人組合を嫌悪し、差別的言動を繰り返していた。1975年度の賞与査定において、参加人組合員の平均人事考課率(夏季58・冬季79)は、F労組員(同101・101)に比べて顕著に低かった。しかし、組合結成前(1974年度)は両グループの平均考課率に差はなく、結成後も組合員側の勤務成績が低下した事実はなかった。また、組合を脱退してF労組に加入した従業員の考課率は急上昇し、既存のF労組員の数値に近似した。労働委員会は、この格差を不当労働行為と認定し、平均的な差に相応する数値を加算して再計算した差額の支払を命じた。
あてはめ
まず、組合結成前後で勤務成績に客観的な変動がないにもかかわらず、結成後にのみ顕著な考課格差が生じている点は、組合所属を理由とする差別の存在を強く推認させる。次に、脱退者の考課が急上昇した事実は、個別の能力評価ではなく組合所属自体が低評価の要因であったことを裏付ける。さらに、会社側が参加人組合を嫌悪する言動を繰り返していた主観的態様も併せれば、会社は参加人組合員であることを理由に、F労組員等との平均的な差に相応する率を一律に低く査定したとみるのが相当である。したがって、不利益取扱いと支配介入が成立する。救済内容についても、不当労働行為がなければ得られたであろう適正な査定を回復させる必要があるところ、原状回復として合理的な数値を算定し、金銭支払を命じることは、是正の必要性に応じた裁量の範囲内といえる。
結論
本件各賞与の人事考課による差別は不当労働行為に該当する。労働委員会が一定の数値を加算して差額支払を命じた救済命令は、裁量権を逸脱せず適法である。
実務上の射程
賞与査定等の裁量性の高い人事評価における差別について、グループ間の統計的な数値比較(結成前後や他組合との比較)から不当労働行為意思を推認する手法を確立した。実務上、個別の評価理由が不明であっても、集団的な格差と反組合的な背景事情があれば、労働委員会による積極的な算定・支払命令が可能であることを示す射程の広い判例である。
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…
事件番号: 昭和61(行ツ)56 / 裁判年月日: 平成元年1月19日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合との間の組合掲示板貸与に関する交渉に当たり、両組合に対して同一の貸与条件を提示し、これを受け入れた甲組合に対しては組合掲示板を貸与し、これを拒否した乙組合に対してはその貸与を拒否した場合において、乙組合に対して組合掲示板の貸与を拒否した使用者の行為は、右貸与条件の内容が、掲…
事件番号: 平成3(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: その他
甲労働組合の内部抗争によりそれぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、乙組合に…