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一、全逓信労働組合の組合員に対するいわゆる組合休暇の不承認が労働組合法七条三号の不当労働行為にあたるとされた事例 二、郵便局長がいわゆる服務表につき全逓信労働組合支部との団体交渉に応ずる権限を有するものと認められた事例
公共企業体等労働関係法3条,公共企業体等労働関係法8条,公共企業体等労働関係法9条,公共企業体等労働関係法10条,労働組合法7条3号
判旨
郵便局長が服務表の内容に関する団体交渉を拒否したことは、交渉委員として指名され交渉権限が付与されていた以上、労働組合法7条2号の不当労働行為にあたる。また、組合休暇の付与を「闘争中であること」を理由に一律に拒むことも、同条3号の不当労働行為を構成する。
問題の所在(論点)
1. 服務表の作成内容について、協約締結権限を持たない郵便局長に団体交渉に応ずべき義務があるか(労組法7条2号)。 2. 組合の闘争状態を理由に組合休暇を一律に拒否することが許されるか(労組法7条3号)。
規範
1. 団体交渉の拒否(労組法7条2号):交渉事項につき決定権限(協約締結権限)がなくても、交渉担当者として指名され交渉権限が与えられている者は、誠実に団体交渉に応じる義務を負う。合意に至った場合は締結権限者に具申する等の努力をすべきであり、正当な理由なき拒否は不当労働行為となる。 2. 支配介入(労組法7条3号):組合休暇が便宜供与としての性質を持つとしても、運用基準等に照らし、組合の闘争によって正常な労使関係が失われていることを理由に、いかなる活動に対しても一切これを与えないことは許されない。
重要事実
D郵便局において、全逓信労働組合(全逓)支部が服務表(勤務割表)の作成内容について団体交渉を申し入れた。郵政省側は、服務表作成は管理運営事項であり局長に交渉権限がないこと、また全逓側が闘争状態にあり正常な労使関係が失われていることを理由に、交渉を拒否し、併せて組合休暇の付与も認めなかった。しかし、労働協約上は支部交渉が認められており、D局長は交渉委員として指名されていた。
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
あてはめ
1. 服務表は各局所の実情に関連し局長の権限とされる事項であり、労働協約上も支部交渉の対象とすることが予定されていた。D局長は郵政省側の交渉委員に指名されており、特段の限定がない限り交渉権限が付与されていたといえる。締結権限がなくとも、交渉に応じ締結権限者に具申すべき義務があるため、拒否に正当な理由はない。 2. 組合休暇制度の運用基準等に照らせば、単に「闘争中である」という抽象的な理由だけで、一切の組合活動に対する休暇付与を拒むことは、便宜供与の趣旨を逸脱し、不当な不利益取扱いや支配介入に該当すると評価される。
結論
D郵便局長による団体交渉拒否および組合休暇の不付与は、いずれも正当な理由を欠き、労働組合法7条2号および3号の不当労働行為に該当する。
実務上の射程
交渉担当者に「決定権限がない」ことを理由とする団交拒否の違法性を論じる際の重要判例である。あてはめでは、当該事項が現場の実情に即したものか、交渉委員としての指名の有無、労働協約上の位置づけを検討する。組合休暇については、便宜供与であっても恣意的な運用が許されないことを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和55(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和61年1月24日 / 結論: 棄却
相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組…
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…
事件番号: 昭和53(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち少数派の乙組合員に対して一切の残業を命じていない場合において、それが乙組合との団体交渉において製造部門につき既に甲組合との合意の下に実施している昼夜二交替制勤務及び計画残業からなる勤務体制に乙組合も服することが残業の条件であるとの使用者の主張を乙組合が拒否したため残業…
事件番号: 昭和57(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち多数派の甲組合に対して組合事務所等を貸与しながら、少数派の乙組合に対しては専従者の職場復帰問題の解決が先決であることなどを理由にその貸与を拒否している場合において、甲組合との間では貸与に際し特段の条件を付したり前提となる取引を行つたりしておらず、右職場復帰問題は組合事…