使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち少数派の乙組合員に対して一切の残業を命じていない場合において、それが乙組合との団体交渉において製造部門につき既に甲組合との合意の下に実施している昼夜二交替制勤務及び計画残業からなる勤務体制に乙組合も服することが残業の条件であるとの使用者の主張を乙組合が拒否したため残業に関する合意が成立していないことを理由とするものであつても、使用者において右勤務体制を実施するに際し、乙組合に対してなんらの提案も行うことなく一方的に乙組合員を昼間勤務にのみ配置して残業に組み入れないこととし、また、右勤務体制を実施しない事務・技術部門においても乙組合員に対しては一切の残業を命じないこととする措置をとり、その後乙組合からの要求により右残業に関する使用者の措置が団体交渉事項となつたのちも誠実な団体交渉を行わず、右の措置を維持継続してこれを既成事実としたものであるなど判示のような事実関係があるときは、乙組合員に対し残業を命じていない使用者の行為は、同組合員を長期間経済的に不利益を伴う状態に置くことにより組織の動揺や弱体化を生ぜしめんとの意図に基づくものとして、労働組合法七条三号の不当労働行為に当たる。
併存する企業内労働組合の一つが使用者の提案する残業の条件を拒否していることを理由にその組合員に対して残業を命じていない使用者の行為が労働組合法七条三号の不当労働行為に当たるとされた事例
労働組合法7条3号
判旨
複数組合併存下で、使用者が少数派組合との交渉において多数派組合と同一の条件を堅持し、その結果として少数派組合員に不利益が生じても、原則として不当労働行為は成立しない。ただし、その態度の真の動機が組合の弱体化等の不当労働行為意思に基づき、団体交渉が形式的なものにすぎない特段の事情がある場合は、支配介入(労組法7条3号)を構成する。
問題の所在(論点)
併存組合の一方に対し、他方の組合との合意条件の受諾を前提として残業を命じない措置が、労働組合法7条3号の支配介入にあたるか。
規範
複数組合併存下において、使用者は各組合に対し中立・平等義務を負うが、各組合の交渉力に応じた合理的・合目的的対応をすることは許容される。もっとも、当該交渉事項に関し、組合に対する嫌悪や団結権否認の意図が決定的動機となって行われた行為があり、団体交渉が既成事実を維持するために形式的に行われていると認められる特段の事情がある場合には、支配介入が成立する。その判断にあたっては、交渉内容のみならず、発生の経緯、労使関係上の意味、双方の態度等一切の事情を総合勘案すべきである。
事件番号: 昭和57(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち多数派の甲組合に対して組合事務所等を貸与しながら、少数派の乙組合に対しては専従者の職場復帰問題の解決が先決であることなどを理由にその貸与を拒否している場合において、甲組合との間では貸与に際し特段の条件を付したり前提となる取引を行つたりしておらず、右職場復帰問題は組合事…
重要事実
日産自動車(上告人)は、合併に伴い2つの労働組合が併存する状態となった。会社は、圧倒的多数派組合(E労組)とのみ協議し、製造部門に「交替制勤務・計画残業」を導入。少数派組合(支部)に対しては、導入時の協議も提案も一切行わず、支部所属組合員を一方的に昼間勤務のみに配置し、残業から完全に除外した。また、交替制のない間接部門においても、支部組合員には一切残業を命じなかった。その後、支部が残業を求めて団体交渉を申し入れたが、会社は「E労組と同一の条件(計画残業等)を無条件で受け入れない限り残業はさせない」との態度を堅持した。支部はこれを差別であり弱体化を狙った不当労働行為であるとして救済を申し立てた。
あてはめ
会社が少数派組合に対し、多数派組合と同一の労働条件を提示し、譲歩しないこと自体には合理性がある。しかし、本件では以下の事情が認められる。(1)製造部門の導入当初、会社は支部の存在を無視して一方的に残業から除外しており、これは団結権侵害の意図の現れといえる。(2)その後の団体交渉においても、会社は自ら形成した既成事実を維持することに終始し、説得の努力を払わず、誠実な交渉態度を欠いていた。(3)間接部門では交替制等の制約がないにもかかわらず一律に除外しており、交渉上の合理的関連性を欠く。以上より、本件措置は、少数派組合員を長期間経済的に圧迫し、組織の動揺や弱体化を図る不当労働行為意思に基づくものと推断される。
結論
本件における会社の一連の行為は、少数派組合に対する支配介入(労組法7条3号)を構成する。製造部門・間接部門のいずれにおいても不当労働行為の成立を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
併存組合下での「中立保持義務」の限界を画した重要判例。基本的には「交渉力に応じた格差」を容認する一方で、導入過程の不透明さや、交渉の形式性を不当労働行為意思を推認する要素として重視する。答案上は、単なる結果の格差ではなく、そこに至る「経緯の非合理性」を具体的事実から拾って論証する際に用いる。
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
事件番号: 昭和55(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和61年1月24日 / 結論: 棄却
相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組…