音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結し,顧客宅等を訪問して行う出張修理業務に従事する受託者につき,次の(1)〜(5)など判示の事情の下において,独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無について十分に審理を尽くすことなく,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には,違法がある。 (1) 上記会社において,出張修理業務のうち多くの割合の業務は,上記会社自らの選抜を経て上記会社の実施する研修を了した上記受託者が担当しており,上記会社が上記受託者とその営業日及び業務量を調整した上で業務を割り振っている。 (2) 業務委託契約の内容は上記会社の作成した統一書式の契約書及び覚書によって画一的に定められており,業務の内容やその条件等について上記受託者の側で個別に交渉する余地はない。 (3) 上記受託者に支払われる委託料は,形式的には出来高払に類する方式で支払われているが,上記受託者は1日当たり通常5件ないし8件の出張修理業務を行い,その最終の顧客訪問時間は午後6時ないし7時頃になることが多く,委託料の額が修理する機器や修理内容に応じて著しく異なるといった事情も特段うかがわれない。 (4) 上記受託者は,特別な事情のない限り上記会社によって割り振られた出張修理業務を全て受注すべきものとされている上,業務委託契約の存続期間は1年間で,上記会社から申出があれば更新されないものとされている。 (5) 上記受託者は,原則として業務開始前に上記会社に出向いて上記会社の指定した顧客訪問予定日時等の告知を受け,上記会社の指定した業務担当地域に所在する顧客宅に順次赴き,上記会社の親会社の制服及び名札を着用し上記会社の名刺を携行して当該親会社が作成したマニュアルに従って所定の出張修理業務を行い,業務終了後も原則として上記会社に戻って伝票処理や修理進捗状況等の記録への入力作業を行っている。
音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結して顧客宅等での出張修理業務に従事する受託者につき,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
労働組合法3条,労働組合法7条
判旨
音響製品等の修理業務を請け負う個人代行店主は、業務の性質上、発注者の事業遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられ、契約内容を一方的に決定され、実質的に労務提供の対価として報酬を支払われており、かつ具体的な指揮監督の下で場所的・時間的拘束を受けているといえる以上、独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り、労働組合法3条の労働者に当たる。
問題の所在(論点)
音響製品等の設置・修理業務を請け負う個人代行店主が、労働組合法3条にいう「労働者」に該当するか。
事件番号: 平成22(行ヒ)52 / 裁判年月日: 平成24年2月23日 / 結論: 破棄自判
旅客鉄道事業等を営む会社である使用者が,運転士の経験のない者に対する運転士発令につき車掌職の経験をほぼ必要不可欠な条件とする運用を始めるに当たり,既に運転士の資格を有しているが運転士への発令を留保され車掌職の経験もない未発令の労働者のうち,希望者の中から選考した者に対し車掌となるための教育を行うこととした場合において,…
規範
労働組合法上の労働者(3条)に当たるかは、(1)事業遂行に必要な労働力として組織に組み入れられているか、(2)契約内容が一方的に決定されているか、(3)報酬が労務提供の対価としての性質を有するか、(4)業務の依頼に対する許諾の自由があるか、(5)指揮監督の下に労務提供を行い場所的・時間的拘束を受けているか、という要素を総合考慮して判断すべきである。これらの要素を充足する場合、(6)顕著な事業者性を備えているといった特段の事情がない限り、労働者性が肯定される。
重要事実
修理会社(被上告人)と業務委託契約を締結した個人代行店主らは、(1)被上告人の出張修理業務の多くを担い、件数や地域が被上告人により割り振られていた。(2)契約は被上告人作成の統一書式により画一的に定められていた。(3)委託料は出来高払だが、1日の業務実態から実質的に労務対価の性格を有していた。(4)原則として割り振られた業務を全て受託していた。(5)毎朝の出向、マニュアル遵守、制服・名札の着用、夕方の事務報告などが義務付けられ、車両経費は自己負担だが特殊機器は貸与されていた。(6)他社製品の修理も可能だが実例は僅少であり、所得税の確定申告等は各自で行っていた。
あてはめ
まず、個人代行店は被上告人の事業に不可欠な労働力として恒常的に確保され、組織に組み入れられているといえる。次に、契約は統一書式で交渉の余地がなく一方的に決定されている。報酬も実態として労務対価性が認められ、業務依頼の拒否権も実質的に制限されている。さらに、指定のマニュアルや制服を使用し、日々のスケジュール管理を受けるなど、指揮監督下での場所的・時間的拘束も認められる。これに対し、源泉徴収がないことや確定申告の事実は労働者性を直ちに否定するものではない。もっとも、本件では他社業務の割合や従業員使用の有無といった「独立の事業者としての実態(事業者性)」を基礎付ける特段の事情の有無について、審理が尽くされていない。
結論
本件個人代行店は、独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り、労働組合法上の労働者に当たる。本件においては当該特段の事情の有無等についてさらに審理を尽くさせるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
判決文からは、個人代行店が他社業務をどの程度行っていたか、また自己の従業員を使用して組織的経営を行っていたか等の「事業者性」に関する具体的詳細は不明であるため、差し戻し審での判断に委ねられた。
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…
事件番号: 平成21(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄差戻
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 出演基本契約は,上記法人が,試聴会の審査の結果…
事件番号: 昭和49(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
民間放送会社とその放送管弦楽団員との間に締結された放送出演契約において、楽団員が、会社以外の放送等に出演することが自由とされ、また、会社からの出演発注に応じなくても当然には契約違反の責任を問われないこととされている場合であつても、会社が必要とするときは随時その一方的に指定するところによつて楽団員に出演を求めることができ…
事件番号: 昭和49(行ツ)94 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人…