油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人の技能、信用によつて会社に受け入れられているものであり、その勤務及び作業に関しては専ら会社が自己の従業員と同様に指揮監督を行い、また、社外工の賃金額についても会社が実質的にこれを決定しているなど判示のような事情があるときは、会社は、右社外工に対する関係において労働組合法七条の使用者にあたる。
いわゆる社外工につきその受入会社が労働組合法七条の使用者にあたるとされた事例
労働組合法7条
判旨
労働関係の実態が、指揮監督、拘束時間、作業内容等において雇用主の従業員と同一であり、形式的な外注契約が体裁にすぎない場合には、労働組合法上の使用者性が認められる。
問題の所在(論点)
形式的には外注業者(会社)の役員・従業員という立場にある者が、発注者との関係において労働組合法7条の「使用者」に対する「労働者」といえるか、すなわち、発注者に使用者性が認められるか。
規範
労働組合法上の「使用者」(同法7条)にあたるか否かは、契約の形式や名称にかかわらず、労働関係の具体的実態に基づき判断すべきである。特に、相手方の指揮監督下で労務を提供し、勤務時間や作業内容が直接的な雇用関係にある者と実質的に差がない場合には、同法上の雇用関係が成立しているものと解される。
重要事実
参加人会社(発注者)は、社外工として派遣された被上告人らに対し、自社従業員と同一の作業場で、自社の用具を用い、自社の職制を通じて指揮監督を行っていた。被上告人らは自社従業員と同一の時間拘束を受けていた。被上告人らは形式上「有限会社D設計所」に所属し、その役員でもあったが、これは参加人会社からの要請により納税上の体裁を整えるために設立されたものにすぎず、業務遂行の実態は従前と変化がなかった。また、対価は労働時間や出来高に応じて計算され、被上告人らに分配されていた。
事件番号: 昭和57(行ツ)158 / 裁判年月日: 昭和62年2月26日 / 結論: 破棄自判
飲食店営業を目的とする会社がその経営するキヤバレーにおいてバンドマスターと数人の楽団員で構成される楽団に長期間継続してダンス音楽等の演奏を行わせている場合において、バンドマスターも含め右楽団の楽団員が年間を通じ右キヤバレーに必要な楽団演奏者としてその営業組織に組み入れられ、右キヤバレーの営業に合わせ、右会社の指定する時…
あてはめ
被上告人らは、参加人会社の指揮監督のもとで、同社従業員と同一の作業に従事し、時間的にも拘束されており、外注業者から独自の指示を受けることはなかった。また、個人の技能に着眼して受入れが決定され、代替性も否定されていた。有限会社D設計所の設立は、参加人会社の要請に応じた形式的な体裁作りにすぎず、労働の実態は直接の労務提供と同視できる。したがって、就業規則の適用や退職金の支給がないといった形式面を考慮しても、両者の間には労働組合法上の雇用関係が実質的に成立しているといえる。
結論
被上告人らと参加人会社との間には労働組合法上の雇用関係が成立しており、参加人会社は同法7条にいう使用者にあたる。
実務上の射程
偽装請負や実態を伴わない法人格を利用した労働関係において、労働組合法上の使用者性を肯定するためのリーディングケースである。答案では、契約形式よりも「指揮監督」「時間的拘束」「労務提供の代替性の有無」といった実態を重視する規範の適用例として活用すべきである。
事件番号: 平成5(行ツ)17 / 裁判年月日: 平成7年2月28日 / 結論: その他
事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監…
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…
事件番号: 昭和49(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
民間放送会社とその放送管弦楽団員との間に締結された放送出演契約において、楽団員が、会社以外の放送等に出演することが自由とされ、また、会社からの出演発注に応じなくても当然には契約違反の責任を問われないこととされている場合であつても、会社が必要とするときは随時その一方的に指定するところによつて楽団員に出演を求めることができ…
事件番号: 平成21(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄差戻
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 出演基本契約は,上記法人が,試聴会の審査の結果…