事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監督の下に置かれているなど判示の事実関係の下においては、事業主は、労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあり、その限りにおいて、労働組合法七条にいう「使用者」に当たる。
雇用主との間の請負契約により労働者の派遣を受けている事業主が労働組合法七条にいう「使用者」に当たるとされた事例
労働組合法7条
判旨
労働組合法7条の「使用者」とは、原則として雇用主を指すが、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にある場合には、その限りにおいて「使用者」に当たる。
問題の所在(論点)
直接の雇用関係にない事業主が、労働組合法7条2号(団体交渉拒否)および同条3号(支配介入)における「使用者」に含まれるか。
規範
労働組合法7条が不当労働行為を排除し正常な労使関係を回復することを目的とすることに鑑み、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等(勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等)について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて同条の「使用者」に当たる。
重要事実
放送局A(被上告人)は、番組制作業務を請負会社Bらに委託していた。Bらの従業員は、Aが作成した編成日程表や台本に従い、Aの器材を使用してAの作業秩序に組み込まれ、Aのディレクターによる直接の指揮監督(作業時間変更、休憩指示等)の下で業務に従事していた。Bらの従業員が組織する労働組合が、Aに対して労働条件の改善を求めて団体交渉を申し入れたが、Aは「直接の雇用主ではない」としてこれを拒否した。
事件番号: 平成5(行ツ)17 / 裁判年月日: 平成7年2月28日
【結論(判旨の要点)】労働組合法7条の「使用者」とは、労働契約上の雇用主のみならず、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある事業主も含まれる。 第1 事案の概要:テレビ局Xは、請負…
あてはめ
Aは、番組制作の細部(日時、場所、内容等)を自ら決定し、Bらの従業員はAのディレクターによる具体的な指揮監督下に置かれていた。この事実に基づけば、Aは派遣された従業員の勤務時間の割り振りや労務提供の態様、作業環境等を実質的に決定していたといえる。したがって、Aはこれらの労働条件について、雇用主であるBらと部分的と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあると評価される。
結論
Aは、自らが支配・決定できる労働条件の範囲において労働組合法7条の「使用者」に当たり、正当な理由なく団体交渉を拒否したことは不当労働行為を構成する。
実務上の射程
派遣・請負等の複雑な就労形態において、実質的な決定権を持つ発注元・派遣先の使用者性を認める際のリーディングケースである。答案上は、支配の「現実的かつ具体的」というキーワードを用い、業務指示の細かさや作業秩序への編入度合いといった具体的事実を拾ってあてはめる必要がある。
事件番号: 昭和57(行ツ)158 / 裁判年月日: 昭和62年2月26日 / 結論: 破棄自判
飲食店営業を目的とする会社がその経営するキヤバレーにおいてバンドマスターと数人の楽団員で構成される楽団に長期間継続してダンス音楽等の演奏を行わせている場合において、バンドマスターも含め右楽団の楽団員が年間を通じ右キヤバレーに必要な楽団演奏者としてその営業組織に組み入れられ、右キヤバレーの営業に合わせ、右会社の指定する時…
事件番号: 昭和49(行ツ)94 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人…
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…