飲食店営業を目的とする会社がその経営するキヤバレーにおいてバンドマスターと数人の楽団員で構成される楽団に長期間継続してダンス音楽等の演奏を行わせている場合において、バンドマスターも含め右楽団の楽団員が年間を通じ右キヤバレーに必要な楽団演奏者としてその営業組織に組み入れられ、右キヤバレーの営業に合わせ、右会社の指定する時間にその包括的に指示する方法に従つて演奏を行い、右会社からバンドマスターに一括して支払われる演奏料は各楽団員の演奏という労務提供の対価とみられるなどの事情があるときは、右会社は、右楽団員に対する関係において労働組合法七条にいう使用者に当たる。
キヤバレーにおいて演奏する楽団の楽団員につき当該キヤバレーを経営する会社が労働組合法七条にいう使用者に当たるとされた事例
労働組合法7条
判旨
キャバレーの楽団員のように、形式上は業務請負的であっても、営業組織に組み入れられ、指定された時間に包括的指示下で労務を提供し、その対価を得ている者は労働組合法上の労働者(および相手方は同法上の使用者)に当たる。また、使用者は労働組合が法5条2項等の要件を欠くことのみを理由に救済命令の取消しを求めることはできない。
問題の所在(論点)
特定のバンド(グループ)に所属し、形式的には独立した請負的な形態で労務を提供する者が、労働組合法7条にいう「使用者」との関係において労働者に当たるか。また、使用者は労働組合の法5条2項等への不適合を理由に救済命令の取消しを主張できるか。
規範
労働組合法7条の「使用者」に当たるか否かは、労務提供者が、①相手方の営業組織に組み入れられ、②相手方の指定する時間に包括的な指示の下で継続的に労務に従事し、③その対価が労務提供それ自体の対価と解されるかという実態から判断する。具体的には、労働力が相手方の処分に委ねられ、相手方が一般的な指揮命令権限を有しているといえる場合には、形式的な契約形態や採用・支払方法のいかんを問わず、使用者に該当する。
事件番号: 平成21(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄差戻
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 出演基本契約は,上記法人が,試聴会の審査の結果…
重要事実
キャバレー「D」を経営する被上告人は、楽団マスター(G、I)に依頼して編成された2つの楽団(計17名)と契約し、長年演奏業務を行わせていた。楽団員はDの営業時間に合わせ、1日約4時間の拘束を受けて演奏に従事した。演奏料はバンド単位で一括してマスターに支払われ、各員への分配はマスターが決定していた。採用時の面接や個別の勤怠管理、欠員補充への関与も被上告人は行っていなかったが、演奏内容への概括的指示や「バンドマンの心得」による規律、源泉徴収の実施、従業員親睦会への加入という事実があった。
あてはめ
楽団員らは、年間を通じDの営業に必要な演奏者としてその営業組織に組み入れられている(①)。被上告人の指定する時間に、心得の掲示や具体的注意といった包括的指示の下で長年継続的に演奏に従事しており(②)、支払われる演奏料も演奏労働という労務提供の対価とみられる(③)。個別の採用選考や勤怠管理が直接なされていない点、演奏料がマスター経由で分配されている点、代替員の選定が楽団任せである点は、上記の指揮命令関係に基づく実態を左右するものではない。したがって、被上告人は一般的な指揮命令権限を有する「使用者」といえる。また、組合の適格要件(法5条2項等)は組合の民主的運営等のためのものであり、使用者がその不備を理由に命令の取消しを求めることはできない。
結論
被上告人は労働組合法7条の「使用者」に該当する。また、組合の要件不備の主張は失当であり、本件命令に違法はない。
実務上の射程
本判決は、労基法上の労働者性よりも広いとされる「労組法上の労働者(および使用者)」の判断基準を示した重要判例である。答案では、形式的な請負関係や集団的な契約形態がある場合でも、本件の3要素(組織への組入れ、包括的指示、対価性)に事実をあてはめることで、労働者性を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 平成5(行ツ)17 / 裁判年月日: 平成7年2月28日 / 結論: その他
事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監…
事件番号: 昭和49(行ツ)94 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人…
事件番号: 昭和49(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
民間放送会社とその放送管弦楽団員との間に締結された放送出演契約において、楽団員が、会社以外の放送等に出演することが自由とされ、また、会社からの出演発注に応じなくても当然には契約違反の責任を問われないこととされている場合であつても、会社が必要とするときは随時その一方的に指定するところによつて楽団員に出演を求めることができ…
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…