マンションの敷地について仮換地の指定がされた場合において,従前の宅地の形状は正方形に近いのに対し当該仮換地の形状は正方形の一角が張り出している分だけ不整形となり,従前の宅地は北側と南側で道路に接しているのに対し当該仮換地は南側で道路に接していないとしても,次の(1)〜(6)など判示の事情の下では,当該仮換地の指定は,照応の原則を定める土地区画整理法89条1項に違反しない。 (1) 当該仮換地は,従前の宅地とほぼ同じ位置に指定されたいわゆる現地仮換地であり,マンションの移転や除却が必要となるものではない。 (2) 当該仮換地の地積は,従前の宅地の地積よりも約5%増加している。 (3) 当該仮換地の上記の張り出し部分は,上記の地積増加分にほぼ対応している。 (4) 当該仮換地は,上記の張り出し部分が加えられたことによって東側でも道路に接することとなり,北側と東側の各道路の幅員も従前の宅地の北側と南側の各道路の幅員より広くなっており,当該仮換地のマンションの敷地としての利用価値が従前の宅地と比較して特に減少したとは認め難い。 (5) 当該仮換地における電線や排水管等の設備の利便性が従前の宅地と比較して低下したとはいえない。 (6) 近隣の鉄道の騒音等の当該仮換地の環境条件が従前の宅地の環境条件と比較して特に悪化しているとはうかがわれない。
仮換地の指定が照応の原則を定める土地区画整理法89条1項に違反しないとされた事例
土地区画整理法(平成17年法律第34号による改正前のもの)98条1項,土地区画整理法89条1項,土地区画整理法98条2項
判旨
土地区画整理法に基づく仮換地の指定は施行者の裁量的判断に委ねられるが、指定された仮換地が従前の宅地の状況と比較して総合的に社会通念上不照応といえる場合には、裁量権を逸脱・濫用したものとして違法となる。
問題の所在(論点)
仮換地指定における「照応の原則」(土地区画整理法89条1項)違反の有無を判断するにあたっての裁量権の範囲、およびその判断基準が問題となる。
規範
土地区画整理法98条1項に基づく仮換地指定は、同法89条1項所定の基準(位置、地積、利用状況、環境等)を考慮すべきであり、施行者の合目的的な裁量的判断に委ねられる。具体的には、指定された仮換地を従前の宅地と比較し、諸要素を総合的に考慮してもなお「社会通念上不照応」であるといわざるを得ない場合に、当該裁量的判断を誤ったものとして違法となる。
重要事実
土地区画整理事業の施行者である市(被告)は、11階建てマンションの敷地(従前地)に対し、仮換地指定を行った。従前地は正方形に近く2方向の道路に接していたが、仮換地は事業計画による南側道路の廃止に伴い、一部が東側道路へ張り出した不整形の形状となり、地積は約5%増加した。原審は、容積率確保のために敷地を増やす必要性は乏しく、より合理的な案があったとして違法と判断したが、市側が上告した。
あてはめ
本件仮換地は現地仮換地であり、建物の移転を要しない。地積の5%増加は張り出し部分の不整形を補うものであり、北側道路の幅員拡張(8m→17m)や東側道路(6m)への接道により、利用価値が低下したとは認められない。電線・排水等の利便性や騒音等の環境条件も悪化していない。原審が指摘する「より合理的な別案」との比較や、未確定の「清算金負担」の有無は、仮換地指定時点での照応原則違反の判断を左右するものではない。したがって、社会通念上不照応とはいえない。
結論
本件仮換地指定は、施行者の裁量的判断の範囲内であり、照応の原則に違反せず適法である。よって国家賠償請求は認められない。
実務上の射程
行政庁の広範な裁量を認める土地区画整理事業において、仮換地指定の違法性を争う際の具体的基準(社会通念上不照応)を示した。原告側としては、単に「より良い案がある」と主張するだけでは足りず、従前と比較して客観的に利用価値や環境が著しく損なわれていることを立証する必要がある。
事件番号: 昭和63(行ツ)60 / 裁判年月日: 昭和63年11月17日 / 結論: 棄却
土地改良法五三条一項二号の照応関係は、従前の土地に所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合でない限り、同一所有者に対する従前の土地全体とこれに対する換地全体とを総合的にみてその間に認められれば足りる。
事件番号: 昭和32(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業において、仮換地の指定変更を行うことは、使用収益関係の特定や事業の円滑な進行という公益上の必要性に基づくものであれば、私益の制限が受忍限度を超えない限り行政権の濫用には当たらない。同一人に対する仮換地を必ずしも一箇所にまとめる必要はなく、変更前後で実質的な不利益に差がない場合は適法…
事件番号: 昭和41(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和48年2月2日 / 結論: 破棄自判
土地区画整理法一〇三条による換地処分がなされたときは、右処分における従前の宅地についてなされた仮換地指定処分の取消を求める訴の利益は失われる。