仮換地指定処分を行うに当たつては、施行者の合目的的な見地からする裁量的判断にゆだねざるを得ない面があるが、指定された仮換地が、土地区画整理事業開始時における従前の宅地の状況と比較して、土地区画整理法八九条一項の照応の各要素を総合的に考慮してもなお、社会通念上不照応である場合においては、右処分は裁量的判断を誤つた違法のものと判断すべきである。
仮換地指定処分における照応原則違反の有無の判断基準
土地区画整理法98条1項,土地区画整理法98条2項,土地区画整理法89条1項
判旨
土地区画整理法上の仮換地指定処分における「照応の原則」の適否は、施行者の裁量的判断を前提とし、社会通念上不照応であるといわざるを得ない場合に限り、裁量権を逸脱・濫用したものとして違法となる。
問題の所在(論点)
仮換地指定処分において、従前の宅地と仮換地との間にどの程度の差異があれば、土地区画整理法89条1項の照応の原則に違反し、裁量権の逸脱・濫用となるか。
規範
土地区画整理法98条1項に基づく仮換地指定は、同法89条1項所定の換地基準(位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等)を考慮してなされるべきものであるが、多数の権利者の利益を合目的的に調整する必要があるため、施行者の裁量的判断に委ねられる。したがって、指定された仮換地を従前の宅地の状況と比較し、諸要素を総合的に考慮してもなお「社会通念上不照応」といえる場合にのみ、裁量権の範囲を逸脱した違法な処分となる。
重要事実
施行者である上告人は、被上告人所有の従前地(農地及び宅地)に対し、仮換地を指定した。当初の素案では従前地のほぼ原位置が予定されていたが、審議会での「日当たりが悪く耕作に適さない」との意見を受け、原位置から約40m離れた位置に変更された。被上告人は、この変更が特定の地権者(D)に有利で、かつ自身には宅地評価が低い位置への指定となり不公平であるとして、照応の原則(法89条1項)違反を理由に処分の取消しを求めた。
あてはめ
本件では、①新設道路計画により従前地の原位置指定が事実上不可能であったこと、②仮換地は従前地から約40mの近傍地に位置し、二面接道により利便性が向上していること、③仮換地によって隣接する他筆土地との一体的な利用が可能になったこと、④仮換地交付率も上昇していること等の事実が認められる。素案の変更経緯に利害関係の対立があったとしても、客観的には従前地と比較して社会通念上不照応とはいえず、特定の者に対し著しく不利益で不公平な指定であるとも認められない。
結論
本件仮換地指定処分は、施行者の裁量権の範囲内のものであり、法89条1項の照応の原則に違反する違法はない。
実務上の射程
行政庁の専門的・技術的な裁量が認められる場面(特に土地区画整理事業)において、「社会通念上不照応」という高い違法性判断の閾値を設定した判例。答案上は、照応の原則の検討において、単なる比較だけでなく「社会通念上不照応」か否かを裁量審査の枠組みで論じる際に活用する。
事件番号: 平成23(行ヒ)166 / 裁判年月日: 平成24年2月16日 / 結論: 破棄自判
マンションの敷地について仮換地の指定がされた場合において,従前の宅地の形状は正方形に近いのに対し当該仮換地の形状は正方形の一角が張り出している分だけ不整形となり,従前の宅地は北側と南側で道路に接しているのに対し当該仮換地は南側で道路に接していないとしても,次の(1)〜(6)など判示の事情の下では,当該仮換地の指定は,照…
事件番号: 昭和32(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業において、仮換地の指定変更を行うことは、使用収益関係の特定や事業の円滑な進行という公益上の必要性に基づくものであれば、私益の制限が受忍限度を超えない限り行政権の濫用には当たらない。同一人に対する仮換地を必ずしも一箇所にまとめる必要はなく、変更前後で実質的な不利益に差がない場合は適法…
事件番号: 昭和63(行ツ)60 / 裁判年月日: 昭和63年11月17日 / 結論: 棄却
土地改良法五三条一項二号の照応関係は、従前の土地に所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合でない限り、同一所有者に対する従前の土地全体とこれに対する換地全体とを総合的にみてその間に認められれば足りる。
事件番号: 昭和41(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和48年2月2日 / 結論: 破棄自判
土地区画整理法一〇三条による換地処分がなされたときは、右処分における従前の宅地についてなされた仮換地指定処分の取消を求める訴の利益は失われる。