一 土地区画整理事業の遂行上仮換地を指定する必要がある場合において、仮換地上に存する使用収益の障害となる物件の除去の時期を確定することができず、仮換地の使用収益開始の時期について目途がたたないときは、土地区画整理法九九条二項の規定に基づき使用収益開始の日を追つて定める旨通知して仮換地の指定をしても違法とはいえない。 二 仮換地につき使用収益開始の日を追つて定める旨通知されたために仮換地を使用収益することができないからといつて、当該仮換地指定が土地区画整理法八九条一項所定の利用状況につき照応していないものということはできない。
一 使用収益開始の日を追つて定める旨通知してされた仮換地指定の効力 二 使用収益開始の日を追つて定める旨通知されたため仮換地の使用収益ができない場合と照応の原則
土地区画整理法89条1項,土地区画整理法99条2項
判旨
土地区画整理事業における仮換地指定において、仮換地の使用収益開始日を「追って定める」として指定当初に確定しないことも、事業の円滑な遂行上必要であれば法99条2項に基づき許容される。この場合、使用収益が一時的に不能であっても、直ちに法89条1項の照応原則に違反して違法となるわけではない。
問題の所在(論点)
仮換地指定において、使用収益開始日の目途が立たないまま同日を「追って定める」とすることが、仮換地の位置・地積等を従前地と照応させるべきとする法89条1項(法98条2項が準用)に違反し、違法となるか。
規範
1. 仮換地の指定に際し、使用収益の障害となる物件の存在等の特別の事情があるときは、施行者は使用収益開始日を別途定めることができる(法99条2項)。 2. 使用収益開始の時期を確定的に予定することが困難な場合には、開始日を「追って定める」旨通知し、後に具体化する方法も、事業の円滑な進捗を確保する法の趣旨に照らし許容される。 3. 法89条1項の「照応」の存否は、当該仮換地の使用収益開始時を前提に判断すれば足り、開始日が未確定であることのみをもって照応原則違反とすることはできない。なお、使用収益不能による損失については法101条1項の損失補償により調整される。
重要事実
土地区画整理事業の施行者(上告人)は、道路工事等のため、被上告人所有の宅地につき仮換地を指定した。しかし、仮換地先には建物が存在し、所有者との立退き交渉に時間を要したため、仮換地の約59パーセントの部分について、使用収益開始の日を「追って通知する」と定めた。指定から6年が経過しても交渉は難航し、開始日の目途が立たない状況にあったため、被上告人は家屋の移築ができず、当該処分が照応原則(法89条1項)に違反し違法であると主張して取消しを求めた。
あてはめ
1. 本件仮換地指定処分は、道路新設等の具体的な工事の必要に基づきなされたものであり、事業遂行上の必要性が認められる。 2. 移転交渉の難航により使用収益の障害除去の時期を確定できない場合であっても、事業の円滑な進捗を図る必要があれば、開始日を追って定める方法をとることは法99条2項の趣旨に反しない。 3. 照応原則の成否は、使用収益が実際に可能となった時点を基準に判断すべきである。本件において、被上告人が現に家屋を移築できず使用収益できない状況にあることは、法101条1項に基づく損失補償の対象とはなり得るが、処分の成立要件としての照応性を直ちに否定する事由にはならない。
結論
本件仮換地指定処分は違法ではない。使用収益開始時期の目途が立たないことをもって照応原則を欠くとした原判決は、法令の解釈適用を誤ったものである。
実務上の射程
土地区画整理事業のプロセスにおける仮換地指定の適法性判断の射程を画した。使用収益の開始を延期する「追って通知」方式の適法性を肯定しつつ、その間の権利者の不利益は損失補償制度によって解決すべきという「処分の効力」と「損失の補填」の分離の論理として答案に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業において、仮換地の指定変更を行うことは、使用収益関係の特定や事業の円滑な進行という公益上の必要性に基づくものであれば、私益の制限が受忍限度を超えない限り行政権の濫用には当たらない。同一人に対する仮換地を必ずしも一箇所にまとめる必要はなく、変更前後で実質的な不利益に差がない場合は適法…
事件番号: 昭和31(オ)141 / 裁判年月日: 昭和35年9月15日 / 結論: 棄却
旧特別都市計画法に基く県知事の換地予定地指定処分のより違法に権利を害されたとするものの訴願を提起することは許されず、行政事件訴訟特例法第五条に従い、直接裁判所に出訴することのみが許される。
事件番号: 昭和34(オ)392 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
仮換地の指定にあたつてなさるべき従前の宅地との照応考慮は、原則として、土地区画整理事業開始の時における状況を基準としてなすべきである。
事件番号: 昭和41(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和48年2月2日 / 結論: 破棄自判
土地区画整理法一〇三条による換地処分がなされたときは、右処分における従前の宅地についてなされた仮換地指定処分の取消を求める訴の利益は失われる。