仮換地の指定にあたつてなさるべき従前の宅地との照応考慮は、原則として、土地区画整理事業開始の時における状況を基準としてなすべきである。
仮換地の指定における従前の宅地との照応の基準時。
土地区画整理法98条2項,土地区画整理法89条1項
判旨
仮換地等の指定における従前の宅地との照応考慮は、原則として土地区画整理事業開始時の状況を基準とすべきであり、その後の状況変化が事業の実施に伴うものである場合はこれを斟酌すべきではない。
問題の所在(論点)
仮換地指定の要件たる「従前の宅地との照応」を判断するにあたり、基準とすべき時期はいつか。また、事業開始後に生じた事業に伴う状況変化を考慮すべきか。
規範
土地区画整理事業における仮換地の指定にあたり、従前の宅地との照応を考慮する際は、原則として事業開始時の状況を基準とする。事業開始後における状況の変化については、それが当該事業の実施に伴うものである限り、照応の判断において斟酌すべきではない。
重要事実
福岡市の復興都市計画土地区画整理事業において、対象土地(ハ)は、事業開始(昭和22年10月)時点では強制疎開跡地の賃貸借が解除され、空地の状態で当時の所有者Dに返還されていた。しかし、その後、事業の一環として昭和31年5月に道路敷へ編入され、道路としての供用が開始された。市長が同年11月に仮換地指定を行う際、土地(ハ)が既に道路となっている事実を考慮せず、事業開始時の空地状態を基準として照応の判断を行ったため、上告人らがその違法性を争った。
事件番号: 昭和42(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和47年12月8日 / 結論: 棄却
旧特別都市計画法に基づき換地予定地が指定されたのちにおいても、区画整理事業の規模の大幅縮減に伴い、同土地を換地予定地から除外する必要を生じ、指定の相手方もいまだ現実に同土地の使用収益を行なつていないなど判示のような事情があるときは、区画整理事業施行者は、同土地につき換地予定地の指定を取り消す旨の変更指定処分をすることが…
あてはめ
本件において、土地(ハ)が道路となったのは事業開始後の昭和31年であり、かつ、その道路編入は本件土地区画整理事業自体の施策として行われたものである。したがって、仮換地指定の際に道路化という現況の変化を度外視し、事業開始時の所有関係や利用状況(空地)を基準として照応考慮を行ったことは、上記規範に照らして正当である。事業実施の結果生じた変化を照応の基礎とすることは、事業の目的や公平な換地配分を損なうため、これを考慮しなかった判断に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
結論
仮換地指定における照応考慮は事業開始時の状況を基準とすべきであり、事業実施に伴う事後の状況変化を考慮しなかった指定処分に違法はない。
実務上の射程
土地区画整理法上の「照応の原則」における基準時を示す重要判例。事業開始後に公共施設用地への編入などで宅地の価値や形状が変化したとしても、それが事業自体によるものであれば、従前の宅地の評価には影響させないという実務上の運用を肯定する。答案では、仮換地指定や換地処分の違法性を論じる際の基準時設定の根拠として用いる。
事件番号: 昭和32(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業において、仮換地の指定変更を行うことは、使用収益関係の特定や事業の円滑な進行という公益上の必要性に基づくものであれば、私益の制限が受忍限度を超えない限り行政権の濫用には当たらない。同一人に対する仮換地を必ずしも一箇所にまとめる必要はなく、変更前後で実質的な不利益に差がない場合は適法…
事件番号: 昭和36(オ)1183 / 裁判年月日: 昭和37年12月14日 / 結論: 棄却
私人に権利を設定しまたは義務を免除する行政処分は、その成立に瑕疵があつても、処分庁において職権でこれを取り消し、変更し得るには、当該処分を取り消し、変更することの公益上の必要性が、処分関係人をしてその取消・変更による不利益を受忍させるに足るほど緊要なものであることを必要とする。
事件番号: 昭和34(オ)513 / 裁判年月日: 昭和35年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧土地区画整理法に基づき行われた換地予定地の指定処分は、新法施行後に手続規定の差異が生じたとしても、新法施行法に基づき新法上の仮換地指定としての効力を維持する。 第1 事案の概要:上告人は、旧土地区画整理法(旧法)に基づいてなされた本件換地予定地の指定処分について、無効を主張して争った。その理由は…